【人口減少本格化に備える】新局面が迫るインフラの新しいあり方とは? 都が検討会を開催 | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【人口減少本格化に備える】新局面が迫るインフラの新しいあり方とは? 都が検討会を開催

 東京都の人口は、5月の時点で1400万人に達した。9月時点は1398万人に減少したものの、都は、2025年の1417万人をピークに人口減少が始まるとみており、60年には1192万人まで減少すると予測している。今後本格化する人口減少は、公共インフラの需要減少、そして収益の減少につながる無視できない問題だ。都では鉄道と駅を軸にしたまちづくりの展開を目指し、鉄道網のさらなる拡大を目指す一方、目前に迫る新局面に向けてインフラの新しいあり方を見つめ直す動きが出ている。

都市部で高密度な鉄道網を備える一方、多摩地域には広い空白地帯がある


 25年以降に本格化する都民の人口減少では、同時に生産年齢人口の急激な減少と高齢者人口の増加がやってくる。移動の頻度が低下する後期高齢者の増加率は全国12位の37.6%となり、増加数では全国で最多の54万人に達する見通しだ。

 公共交通の利用機会が多い生産年齢人口が減少すれば、路線の収益確保はこれまで以上に難しくなる。特に多摩西部と多摩南部のエリアで減少が著しく、公共交通ネットワークの維持が危ぶまれている。

 一方で、生活を支えるインフラとしての重要性は高まる。電車・バスなど都内の公共交通網は都心で高密度になるものの、多摩地域の一部は交通不便地域が広がっているからだ。不便地域の中には、起伏の激しい丘陵地と高齢化率が高い地域が重なっているエリアが複数見られる。増加する高齢者の生活の足となる公共交通の維持は必須だ。

◆都民の生活の足は電車
 東京都パーソントリップ調査(18年)や、国土交通省の全国都市交通特性調査(16年12月)を基に、都がまとめた都内の代表交通手段分担率を見ると、区部では鉄道の分担率が約50%、自動車が7.9%となっている。

 代表交通手段は、ある目的地まで移動する際の主な移動手段の指標となる。分担率の全国平均は、鉄道が約17%、自動車が約45%となっている。比較すると、東京区部の移動は鉄道の依存が突出していると言える。多摩地域でも、鉄道約30%、自動車約23%の割合で、鉄道依存は高い。

◆鉄道ネットワークの拡大
 東京の将来を見据えた公共交通の戦略に関しては、都が19年にまとめた戦略ビジョンの中で「駅を中心とした誰もが移動しやすい交通環境の充実を図る」とし、鉄道を軸にバスやタクシー、デマンド交通などと最先端技術の組み合わせを促進する。

 軸となる鉄道ネットワークでは、多摩都市モノレールの北部延伸で、都内26市の中で唯一これまで鉄道駅のなかった武蔵村山市に駅が整備される計画だ。

 上北台駅(東大和市)からJR八高線箱根ヶ崎駅(瑞穂町)までの北部延伸は10月、軌道線形や駅の配置を検討する基本設計の委託が完了し、いよいよ事業が動き出すところだ。

 区部でも、都市高速鉄道8号線(東京メトロ有楽町線)や同12号線(都営大江戸線)の延伸に向けた課題の整理が進むなど、鉄道網の発達は今後も継続しそうだ。

◆公共交通のあり方検討
 鉄道に加え、地域特性に即した公共交通の目指すべき姿を模索する動きも出ている。都が10月に設置した「東京都における地域公共交通の在り方検討会」では、誰もが移動しやすい利便性の高い都市の実現に向けた施策の方向性を検討する。

 ベースとなる考え方は「集約型地域構造への再編」。駅などを地域の拠点に位置付け、そこから発着するバス、タクシー、デマンド交通などとMaaS(モビリティーのサービス化)、自動運転技術といった新技術・サービスを組み合わせることで、駅を中心とした誰もが暮らしやすい都市づくりを目指す。

 検討会は、22年3月までに残り6回程度の会合を予定、同下旬ごろに地域公共交通に関する基本方針の最終的な取りまとめを公表する。

今月開いた地域公共交通の在り方検討会の初会合

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