【現場の命守るものづくり】"軽くて強い" アサヒ産業がポリエステル製養生網を開発 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【現場の命守るものづくり】”軽くて強い” アサヒ産業がポリエステル製養生網を開発

 大阪府枚方市に本社を置くアサヒ産業(松浦正治郎社長)は1953年創業の仮設機材メーカー。社員数は35人と小規模ながらも、商品力と高い品質には定評があることで知られる。

松浦社長


 同社の主力製品は、2000年に発売した手すり先行足場「ミレニューム」。「手すり部分を基本部材としてあらかじめ取り付けておくという発想を初めて打ち出した」と松浦社長は胸を張る。ミレニュームに触発された他メーカーもこの動きに追随し、手すり先行足場はいまや全国の現場で広く用いられるようになっている。

 ミレニューム自体も16年の地震により被災した熊本城天守閣の復旧工事を始め、関西国際空港の大規模改修事業といった大型プロジェクトに採用されるなど、売り上げの約半分を占めているという。

 このほかにも資機材の落下事故防止を目的に開発した「ミニリフト」や、足場部分の隙間をなくした「フルカバー床付き布わく」、つかみ金具が緊結部に当たらないよう工夫した「内爪の床付き布枠」などを展開、仮設機材を中心に「現場の人の命を守る商品づくりに一途に取り組んできた」と松浦社長は話す。

 そんな同社がことし秋に発売した「マルチGRID(グリッド)」は、安全確保のために足場の外側に張る金網(養生金網)に代わるポリエステル製の養生網だ。もともと漁網に使用されていた素材を使うことで、強さと耐候性を兼ね備えている。

 開発を担当した同社経営企画室長兼技術開発部長の宮東良和氏は、「複雑なマンションのコーナー部分でも折り曲げて使うことができる。一般的なフレーム付き養生金網と比べて価格は2-3割ほど高くはなるが、手触りも良く、さびない上、何より軽くて扱いやすいのが強み。ランニングコストで考えるとメリットは大きい」と利点を強調する。松浦社長も「マンションの大規模改修や鉄道・空港、あるいは商業施設など、人との距離が近い現場を始め、幅広く使ってもらえるはず」と期待を寄せる。工事現場全般のほか、獣害対策の分野での展開も視野に入れているという。

 長年鋼材を主に取り扱ってきた同社にとって、ポリエステル素材を使ったマルチGRIDは大きな挑戦でもある。「鉄以外の素材も含め、建築現場の安全性向上にこれからも貢献していきたい」と松浦社長は意気込む。

マルチGRIDの施工例。金属網と同等の強さを持ちながら軽量で加工もしやすい

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