【伝統×先端の融合】東京メトロ銀座線銀座駅リニューアル 色・光・形で「憧れの街」表現 | 建設通信新聞Digital

5月14日 火曜日

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【伝統×先端の融合】東京メトロ銀座線銀座駅リニューアル 色・光・形で「憧れの街」表現

 東京地下鉄は、2017年に開業90周年を迎えた銀座線について、浅草~渋谷駅間の全19駅を対象にリニューアル工事を進めている。このうち17年から進めていた銀座駅リニューアル工事がほぼ完了し、10月16日の始発から供用を開始。銀座が持つ上品さや優雅さを色や光、形で表現しつつ、誰もが直感的に理解できる駅を目指した。

新しくなった銀座線の改札


 銀座線リニューアル工事は、全駅を下町、商業、銀座、ビジネス、トレンドの5エリアに区分し、それぞれでデザインコンペを実施した。応募作品から優れたアイデアやデザインモチーフなどを抽出、駅デザインの基本的な考え方を整理し、デザインガイドラインとして取りまとめた上で、実施設計を進めている。

 銀座線の路線コンセプトは「伝統×先端の融合」。日本最古の地下鉄として東京の街をつないできた歴史を大切にしながら、先端の機能を取り入れ発信する路線という意味が込められている。デザインコンペを実施した目的の1つに、「コンペを通してその駅や地域のことを知り、駅への愛着を育み、街と駅の将来を考えることで潜在的な価値や新たな気付きが引き出される」を挙げた。

 銀座エリアのデザインコンセプトは「憧れの街」「人と街をつなぐ光のゲートアベニュー」だ。上屋から広がる光がコンコースから改札口、最下層のホームへと連続することで、統一した新しい銀座駅の印象をつくり上げ、上品さや優雅さ、高級感を感じさせる空間を演出した。15年に実施したデザインコンペ最優秀賞の吉岡あずささん(アトリエ・ジーアンドビー)のアイデアを具現化している。

銀座線につながる上屋


 「文字を読めない人でも色や形、光で目的地が直感的にわかる空間を設計の力でつくり上げた」と、設計を担当した日建設計の須賀博之氏は力を込める。35カ所の出入り口に加え3路線が交わる銀座駅では「わかりづらさ」が課題となっていた。

 「東京地下鉄や関係者と意見交換を重ね、『わかりやすさの追求』が共通目標となった」(須賀氏)。各路線をラインカラーに合わせた色でライトアップ、頭文字のアルファベットをモチーフにした図形で表現し、どの路線にいるのか、地上に何があるのかを利用者に案内する。

 各路線に対するイメージを色と形で表現した。ラインカラーは銀座線がレモンイエロー、丸ノ内線がチェリーレッド、日比谷線がシルバーホワイトだ。また銀座線は丸、丸ノ内線は三角、日比谷線は四角をモチーフ図形とした。

丸ノ内線のオリエンテーションサイン

日比谷線のオリエンテーションサイン


 改札口は銀座の玄関口として、ホテルエントランスのような雰囲気に仕上げた。天井には地上の様子を表したオリエンテーションサインを描き、開札周辺にどのようなシンボル施設があるかを案内する。既存の施設配置や天井内設備のルートを見直して天井を高くし、明るく広がりのある駅空間とした。

 ホーム側壁は一面に1920年から100年間の銀座の街並みイメージを描き、歴史を感じる役割を果たす。このほか丸ノ内線のエレベーター、日比谷線の丸ノ内線への乗り換え用階段昇降機の新設などバリアフリー設備も整備、作家の吉岡徳仁氏のパブリックアート作品を設置した。

ホーム壁面に描いた銀座の街並み


 工事を担当した東京地下鉄の三丸力工務部第二建築工事所長は「計画段階から町の方々と、銀座駅のあるべき姿や思いを共有し、設計に反映できた」と振り返った上で、「銀座の玄関として、地域の方やインバウンドに利用していただきたい。新しい駅になって良かったとの声が励みとなる」と語った。

 設計は日建設計、施工を大成建設、設備は電力工事を東光電気工事、信通工事をエクシオテック、機械工事を高砂熱学工業がそれぞれ担当した。

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