アメリカン・エキスプレス・インターナショナルは、アメリカン・エキスプレス(アメックス)の法人カード(ビジネス・カード)を活用した企業間決済の拡大に取り組んでいる。他産業に先駆けて建築・建設業に特化したサービスを開始し、カード会員でなくても建設キャリアアップシステム(CCUS)登録事業者はカード会員用ビジネス・マッチング・プラットフォームを無料で利用できるようにした。中小企業経営者や個人事業主がビジネス・カード会員と情報交換し、取り引き先の新規開拓や自社の課題解決につなげてもらう。ビジネス・カードの普及につなげ、キャッシュレスによる決済業務の効率化やキャッシュフローの安定化に貢献する考えだ。 同社は、2000年代に中小企業の経営者や個人事業主を対象にしたビジネス・カード会員による企業間決済を開始し、現在はビジネス・ゴールド・カード、ビジネス・プラチナ・カード、ビジネス・カードの3種類を提供している。建築・建設業界に特化したコンサルティングチームを立ち上げ、会員拡大に力を入れてきた。
建設業がクレジットカード決済を導入することで、従来の請求書による決済よりも迅速かつ確実に資金が流れる「キャッシュフローの改善」や、アメックスのカード会員の資格を生かして取引先の信用を高める「安心のトランザクション」などがある。また、建設業の専門知識を持つ営業チームが、キャッシュレス決済の導入やキャッシュフローの改善を支援する“伴走型”サービスも提供している。
特に建設業は、人手不足や長時間労働を改善する業務効率化、働き方改革が重視されており、キャッシュレス決済に移行することで現金の持ち運びや金額確認などの解消による業務効率化や、支払いサイトの改善による資金繰りやキャッシュフローの安定化に貢献する。建設業の請求においても顧客サービスの一環としてカード決済を導入し、リピーター獲得や自社のキャッシュフロー安定化に取り組むケースが増えている。
建設業界へのビジネス・カードのさらなる普及を図るため、建設業振興基金と連携し、24年11月からCCUS登録事業者に特化したサービス提供も開始した。ビジネス・カード会員に提供する「ビジネス・マッチング・プラットフォーム」をCCUS登録事業者に無料で提供。オンラインでユーザーとつながり、同業種・異業種を含めて情報交換できることで、ビジネスパートナーの開拓や課題解決につなげる。アメックス・カードの顧客コミュニティーの中で交流できるのもメリットの一つだ。
CCUS登録事業者として参加する場合は、利用できるのはオンラインの交流だけだが、ビジネス・カードに入会するとビジネス・マッチング・プラットフォームの全機能を活用でき、対面型ビジネス・マッチングイベントへの参加なども可能になる。
ビジネス・マッチング・サービスの活用事例として、千葉県に所在する足場組立・解体業と東京都のリフォーム業の企業間でビジネスマッチングが成立したほか、内装部材の原料高騰に対応するために、京都府の住宅設備機器販売会社と東京都の不動産コンサルタントの提携などが実現しているという。
また、個人向けカードと同様、利用金額に応じてポイントが貯まる。貯まったポイントは各種特典に交換でき、商品の支払いや年会費に充当するほか、商品やサービスとの交換、提携会社のマイルやポイントへの移行などができる。通常100円の利用ごとに1ポイントを獲得することが可能だ。
建設業界の取り引きは、銀行振り込みを中心に現金、口座振替、手形・小切手などで支払うが、クレジットカード決済も徐々に浸透しつつある。同社が23年4月に実施した「建設・建築業界における企業間決済調査」によると、「支払時にカード決済を利用したい企業」は58.3%、「請求時にカード決済を受け入れたい企業」も44.3%に上り、カード決済の導入に対する期待は大きい。
国内のBtoC取り引きの市場規模は約300兆円で、キャッシュレス取引額は3分の1の約100兆円を占める。一方、BtoB取り引きは約780兆円の規模に対して約5兆円にとどまる。同社は「クレジットカードを利用することで、現金決済に伴う業務を効率化し、本業に注力してもらいたい」と決済手法を変革する意義を語る。