【深化する関西の建設ICT⑮】川田テクノシステム 3次元モデル内で設計計算 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【深化する関西の建設ICT⑮】川田テクノシステム 3次元モデル内で設計計算

 国土交通省が先導するBIM/CIMの取り組みが、地方自治体にも広がり始めている。これまで自治体職員のCAD研修は2次元が主体だったが、BIM/CIM導入に舵を切った兵庫県のように、将来を見越して職員の3次元研修に乗り出す動きも出てきた。BIM/CIM原則適用が2023年度に前倒しされる中、3次元設計の流れは一気に進むと言われている。同県を始め多くの自治体で講師役を務める川田テクノシステムに、3次元設計時代におけるBIM/CIMツールのトレンドを聞いた。

荒木氏


 「国土交通省が原則適用を前倒ししたことで、BIM/CIM関連業務件数は一気に増えるだけに、受注者はより効率的な設計に移行しなければ対応が難しくなる。今後は3次元モデルありきの流れが色濃くなるはず」と、近畿エリア部長の荒木敏明氏は見通す。これまで3次元モデルは2次元図面を元に作成していた。成果品が2次元を前提にしていることが要因だが、設計条件などが変更された際には2次元データを修正して再計算し、それを3次元モデルに置き換える手間が課題としてある。「3次元モデルから設計計算できる仕組みに変えるべき」と訴える。

 土木系3次元設計CAD『VーnasClair(ヴィーナスクレア)』を提供する同社は、ことし4月から3次元モデル内で設計計算ができる新コンセプト「フュージョン商品」の販売に踏み切った。ヴィーナスクレアには分野ごとにオプションソフトが充実しているが、その中から道路/CIMの「WALL_Kit」と、橋梁とボックス/CIMの「橋台概略設計」「橋脚概略設計」「液状化判定」「BOXカルバート設計」の計5つを3次元CADと設計計算ソフトのフュージョン商品として投入した。

道路/CIMの「WALL_Kit」


 例えばWALL_Kitでは3次元モデルのデータから横断地形計算が手入力なしで実現できる。荒木氏は「作成した3次元モデルの中の情報から設計計算を可能にした仕掛けはBIM/CIMベンダー業界では初の試み」と力を込める。開発には3年もの歳月を費やした。今後到来する3次元設計時代を見据えたコンセプトであるため、現時点でどこまでユーザーに受け入れられるかは「未知数」だが、国交省がインフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に舵を切り、BIM/CIM原則適用も前倒しされる中で「3次元設計の流れが今後の潮流になる可能性は大きい」と先を見据える。

 これまでのソフト開発はユーザーを前提に取り組んできたが、3次元ありきのフュージョン商品は「われわれベンダーからのプロダクトとなる」と強調する。国交省がBIM/CIM適用範囲を拡大するのに合わせ、今後も対象オプションを充実させる方針だ。既にユーザーの建設コンサルタントからは「3次元モデルと設計計算の連携はわれわれ設計者にとっての大きなメリットになる」との声が挙がっているほか、公共発注者からも「そうした切り口こそ本来のBIM/CIMツールに他ならない」と評価の声が聞こえてくる。

フュージョン商品は現在5つ


 関西では近畿地方整備局を始め京都、奈良、兵庫、福井の1府3県など公共発注者にも幅広く導入されるヴィーナスクレアだけに、同社にとっては満を持して投入したフュージョン商品が「3次元設計普及のきっかけになる」との期待を持っている。

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