【さまざまな人々の野球の聖地に】約5年の歳月経て川崎・等々力球場がリニューアル | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【さまざまな人々の野球の聖地に】約5年の歳月経て川崎・等々力球場がリニューアル

 等々力緑地(川崎市)内に立地する等々力球場が、2015年の旧球場解体開始から約5年の歳月を経て生まれ変わった。10月の供用開始を経て既に社会人野球や高校野球の利用も活発で、順調な滑り出しを切っている。ただ、球場リニューアルは一筋縄ではいかなかった。16年6月に着工してすぐ地下埋設物の存在が指摘され、当初予定していた工期、事業費とも約2倍に膨らんだ。長い時間はかかってしまったものの、市民待望の新たな球場では21年、甲子園の県予選も開催される予定だ。

南側から見た等々力球場


 新球場は、従来の倍以上となる計9279人を収容可能。内野席は2階が2050人、3階が3182人、車いす利用者が30人、芝生の外野席は、開放的な空間でレジャーシートを広げるなどして4000人が観戦できる。芝生の外側には、車いすで利用可能な17のスペースも設けた。内野席からは季節や天候条件が合えば、ほとんど遮るものなく、富士山の絶景も楽しめる。

 緑地内の球場として、“誰もが利用できる施設”を意識し、外野席を取り囲むフェンスの外側には、ライトからレフト側にかけデッキを設置。有料ゲームを含め、球場内に入らなくても内部を見学できるため、緑地利用者がふと足を止めるきっかけにもなりそうだ。

 競技者に向けた設備や機能にもこだわる。もともと北西側だったホームベースを北東に変えたことで、太陽を背に守備できるようになり、西日の影響を最小化した。人工芝はプロ野球でも使用しているミズノ製を採用。照り返しが気にならないという。1塁と3塁側にある2つのダッグアウト(35人用)横には、素振り室も完備。床はスパイクにも対応可能なゴム製にした。

ダッグアウト(手前にステップを設けることで、監督が指揮しやすく、選手が応援しやすいつくりにした)


 選手ロッカー室は1・3塁側それぞれに2室ずつ計4室整備。2室は入り口は別だが、シャワー室(6機)をはさみ互いに行き来できるようにした。各部屋ごとにいす席25席、物入れ4つがある。

選手ロッカー室


 このほか屋内ブルペンや人工芝の屋内練習場、素早く点灯可能なLEDナイター照明、映像も流せるフルカラーLEDスコアボードなども設置した。

屋内ブルペン(平時はいすなし)


 バックネット裏の特別観覧席や審判員室、本部室などの窓は5度傾け、太陽光による反射の影響を受けない工夫を取り入れた。

バックネット裏室内の窓は5度傾け 太陽光による反射に配慮


 球場外観は、ベージュ色を用いたほか、丘のような形をした芝生も配置し、緑地とひと続きの明るく緑が感じられる空間となった。誰でも入れるデッキには緑地につながる複数の出入り口もつくり、回遊性の向上にも貢献する。

 野球場の規模は、RC・プレキャストRC一部S造3階建て延べ1万1980㎡。フィールドは両翼100m、センターは122m、面積は1万3616㎡で、3項目とも神奈川県内最大となる。

 設計は山下設計が担当した。本体工事は鹿島・石井建設工業・松浦建設JVの施工でほぼ完了しており、残りは外構工事のみ。電気設備工事は千代田電気・信号器材JV、衛生設備工事は富士設備・明和工業JV、空気調和設備工事は富士設備、昇降機設備工事は日本エレベーター製造が担当している。工期は本体工事も含めすべて12月15日まで。総工事費は約89億円。建設地は中原区等々力1。

 10月19日の完成記念式典で川崎市の福田紀彦市長は「素晴らしい球場ができた。子どもたちにとってここでプレイすることは励みになると思う。中学生や高校生だけでなく、社会人などさまざまな年代の野球の聖地になれば」と期待を込める。

記念式典(中央が福田市長)

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