【深化する関西の建設ICT⑰】奥村設計事務所 3次元強みに成長路線歩む | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

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【深化する関西の建設ICT⑰】奥村設計事務所 3次元強みに成長路線歩む

 奥村設計事務所(名古屋市)の奥村真次社長は「建設コンサルタントからの業務依頼に3次元要求の頻度が増している」と実感している。2006年に導入した3次元設計への取り組みが、いまは同社の「強み」になっている。2年前には3次元オペレーターで構成するCIM推進グループを発足し、現在は7人体制で多様な3次元の要求に対応するが、「それでも回らないほど引き合いは多い」と明かす。8月には「2次元設計の延長で効果的に3次元モデリングが実現する」と、新たな設計ツールの導入も決めた。

奥村社長


 奥村氏が独立したのは02年。「何がなんでもやり遂げる」という信念を持ち、建設コンサルタントや建設会社からの業務支援を積極的に進めてきた。3次元設計に取り組み始めた06年当時はまだ売り上げ1億円規模だったが、直近20年4月期は5億円を超え、組織も50人体制を確立するまでに成長した。来春には8人の新卒を迎え入れる予定で、将来的には「30年までに150人規模の設計集団を目指している」と先を見据える。

 同社の強みでもある3次元の対応については3次元測量や点群データ解析などにも取り組むが、主体は設計支援として施工計画を中心に多様な要求に応えている。国土交通省がBIM/CIMの原則導入を前倒ししたほか、地方自治体でも3次元化の流れが拡大してきたことで、取引先の建設コンサルタントや建設会社などからの3次元モデリング依頼が増加しており、特に売上げの半数以上を占める道路構造物については橋梁部の3次元依頼が後を絶たない。「オペレーターの数も限られているだけに、少しでも効率的にモデリングできるツールを求めていた」と説明する。

導入した橋梁CIMシステムは2次元設計の延長で3次元モデリングが可能


 新たに導入したオフィスケイワン(大阪市)の橋梁CIMシステムシリーズは鋼橋対応「CIM-GIRDER」、PCコンポ橋対応「CIM-COMPO」、PC箱桁橋対応「CIM-BOX」、3次元PDF対応「CIM-PDF」で構成しており、その中から同社は計4ライセンスを契約した。奥村氏は「線形図から半自動でモデリングできる部分に惹かれた。大手建設コンサルタントから依頼される橋梁の3次元モデリングはスパンも大きく、予備設計段階から複数のパターンで発注者に見せたいとの依頼もあり、より効率的にモデリングできるツールを探していた」と強調する。

 コロナ禍でオフィスケイワンの保田敬一社長からウェブ会議システムを通じて、橋梁CIMシステムの説明を受けたのはことし7月のことだ。2時間ほど説明を聞き、導入を即答したという。保田氏によると、奥村設計事務所のように「手軽に3次元モデリングできる操作性を評価してもらい、一度のデモを通じて導入を決めるケースは少なくない」と説明する。6月に発売した鋼橋対応「CIM-GIRDER」は当初、年間で10ライセンスの販売を目標にしていたが、この4カ月で倍の20ライセンスに迫る勢い。BIM/CIM原則化が前倒しされ、建設コンサルタントや橋梁メーカー、建設会社からの3次元対応意識が一気に拡大している格好だ。

多様な3次元要求に対応


 橋梁CIMシステムについて、奥村氏は「3次元要求が多様化する中で、幅広い橋梁形式に対応するだけでなく、部分的なモデリングも可能になれば、さらに業務効率を上げられる」と考えている。しかしながら「重要なのはツールではない。設計担当が土木(現場)についての知識をしっかりと持たなければ質の高い3次元モデルは提供できない」と人材育成の必要性を強く訴える。






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