【過去に例を見ない工事】名古屋テレビ塔免震化 重量4000tの鉄塔を持ち上げた方法とは | 建設通信新聞Digital

5月1日 木曜日

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【過去に例を見ない工事】名古屋テレビ塔免震化 重量4000tの鉄塔を持ち上げた方法とは

 竹中工務店は、9月にリニューアルオープンした新・名古屋テレビ塔「MIRAI TOWER」の全体改修工事の施工を担い、高さ180m、重量4000tの鉄塔を持ち上げて免震装置を取り付ける工法に挑戦した。設計・監理の日建設計と共同で張力制御装置(TCD)を開発するなど両者が緊密に連携しながら工事を進め、過去に例を見ない工事を無事完成させた。

日建設計と共同で張力制御装置を開発した


 名古屋テレビ塔は内藤多仲が設計を手掛け、1954年に完成した日本初の集約電波塔。登録有形文化財に指定されている。現在は観光塔として利用されているが、免震機能を付与した塔内ホテルを持つ施設へのリニューアルが計画された。

 免震化では震度6強でも耐えることを目指し、基礎柱脚部を切断して基礎下面に免震装置を設置する工法を採用。この場合、基礎下面に装置を設置する従来工法に比べて掘削範囲などを大幅に低減できるが、裾広がりの施設形状に特有の外側に広がろうとする力(スラスト)を既設の基礎梁から新設する鉄骨タイビームに移行しながら装置を設置するという精密な施工技術が求められた。

 ただ、既設基礎や基礎梁にどのような力がかかっているかを正確に把握することが不可能なため、この不明確な力を想定しながら施工安全性を確保することが施工計画のポイントとなった。

 これを解決するため、基礎の水平拘束度を変化させながらシミュレーションを繰り返す独自の解析手法を考案。初期張力として4900キロニュートンを加えることで既設部材を安全に切断できるようにし、「完成後の塔脚スパン35mの広がりを5mm以下に抑える」という厳格な設計与条件もクリア。共同特許も出願している。

 また、通常の免震改修では一般的に1柱に1種類の免震装置を設置するが、この工事では4柱脚で建物全体を支える特殊構造のため、▽鉛直荷重支持の「直動転がり支承」▽変位を戻す「積層ゴム」▽暴風時の居住性確保の「耐風ストッパー」▽地震時の揺れを減衰させる「オイルダンパー」–の4種類計7台の装置を1柱脚に設置している。

 規模はS・SRC造地下1階地上6階建て3799㎡。工期は2019年2月1日から20年8月末まで。工事場所は名古屋市中区錦3。

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