【JRE-BIM最前線/一般化とその先へ(上)】ガイドライン策定と原則化 工事事務所主導の活用拡大 | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【JRE-BIM最前線/一般化とその先へ(上)】ガイドライン策定と原則化 工事事務所主導の活用拡大

 土木、建築を含めたBIM/CIMの取り組みの総称として、JR東日本が推進する「JRE-BIM」が3年目を迎え、各工事事務所でBIMを活用する動きが加速している。5月には「JRE-BIMガイドライン」を策定し、土木、建築、電気など系統一体の3次元モデルを調査・計画、設計、施工、維持管理の各段階に一気通貫で活用する手順をまとめた。一方、中野駅や武蔵小杉駅などの現場では、BIMと最先端のICTを組み合わせた高度利用の先導的モデル事業も進めている。新規事業の原則BIM活用にかじを切る中、スピード感を持って進むJRE-BIMの最前線を紹介し、建設現場の将来像を展望する。

鉄道施設用のオブジェクトをまとめたカタログライブラリーを提供する


 JRE-BIMは、JR東日本が人手不足解消と生産性向上を実現するために進めるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みの1つで、扱うデータは受発注者の共有データ環境であるBIMクラウドに集積する。

 2016年11月の全社を対象にした「技術革新中長期ビジョン」の策定をきっかけに、建設部門では部署横断型のプロジェクトチームを17年秋に立ち上げ、建設生産プロセスの各段階でJRE-BIMを進めてきた。

 例えば、調査・計画から設計、施工と継続して活用する案件も徐々に増え、対象も駅改良工事や駅ビル新設、線路切換工事などに拡大した。これらの知見を踏まえ、欧州の鉄道事業者や国土交通省のガイドラインなども参考にまとめたのがJRE-BIMガイドラインとなる。

■実行計画に手順示す
 JRE-BIMを本格展開するため、建設部門は3次元レーザースキャナーを使う測量を18年度に原則化した。20年度末には、計画段階の全案件に、原則BIMを適用する方針を打ち出している。設計、施工段階にも順次対象を広げていく。

 ポイントは、各工程での具体的な運用や契約までの業務手順を示したことであり、特にBIM実行計画書を定めて共有することを明示した。

 実行計画書は、プロジェクトの特徴に合わせたBIM導入の目的、各モデルの作成範囲やスケジュール、LoD(詳細度)、作成責任者などを明記し、受発注者で共有する。土木、建築、電気設備など関係者も多数にわたるが、各系統で取り組むBIMを共有する手順も示す。

 付属する「BIM作成データシート」には、財産図から作成したか、新規に設計したかなどモデルの根拠を示し、モデル活用がスムーズに進むようにする。鉄道の軌道や信号機、電線、券売機など鉄道施設特有のオブジェクトをそろえたカタログライブラリーやテンプレートも整備し、受注者に無償で提供する。

■双方向のデータ共有
 ガイドラインの策定を支援した矢吹信喜大阪大大学院教授は「公共工事は分離発注が原則のためデータ連携に分断が生じやすい。JRE-BIMはシームレスなデータ連携に重点を置いている」と語る。データはBIMクラウドで共有するため、「受注者がデータを“納品”すれば関係者が双方向で情報共有できる環境にある。インフラ発注機関として部署横断したデータ連携にいち早く取り組んでいる」と評価する。

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