【JRE-BIM最前線/一般化とその先へ(中)】土建一体BIMモデルの活用 4Dモデルで進捗管理 | 建設通信新聞Digital

4月24日 水曜日

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【JRE-BIM最前線/一般化とその先へ(中)】土建一体BIMモデルの活用 4Dモデルで進捗管理

 JR東日本のBIM先導技術を検証しているモデルプロジェクトが、東京都中野区、東京メトロと進める「中野駅西側南北通路・橋上駅舎等事業」だ。JR東日本として“土建一体BIM”を施工段階で初めて実装したプロジェクトの1つとなる。駅舎、南北自由通路、駅ビルなどを一体化し、点群データとBIMモデルを統合して活用している。鹿島の施工で本格着工した現場の生産性向上に役立てる。

道路一体建物モデル


 同事業は、中野駅の西側ホーム直上に人工地盤を構築し、南北自由通路、駅舎、駅ビルで構成する道路一体建物を建設する。道路一体建物はS一部CFT造5階建て延べ約1万8500㎡で、2026年の開業を目指す。

 難易度の高い施工をフロントローディングするため、施工段階で土建一体BIMを作成した。南北100m、東西500mの軌道とホーム階を点群測量し、設計BIMとの統合モデルを工事や関係者間の合意形成に役立てる。

 この土建一体のBIMは鹿島も初の試みであり、自社に蓄積したBIMの知見を積極的に導入している。坪内浩治JR中野駅工事事務所所長は「施工ステップや動画で4D化し、クローラークレーンの配置など仮設計画の検討に役立てた。 BIMのスタッフも常駐し、 問題点を早期に把握して施工の手戻りや手待ちを減らす」と目的を語る。

■受発注者のシームレスな情報共有を実現
 人工地盤の施工は、軌道やホームでの工事が中心であり、信号機の見通し確保、杭や梁、仮設物と鉄道施設が支障しないようにする。干渉や離隔、建築限界の確認にBIMが効果を発揮している。

 例えば、ホームの仮囲いが信号やモニターの死角にならないよう、運転士目線で列車が仮想空間を走行するムービーを作成。運転士や駅員などの関係者がBIMでシミュレーションし、実際に現地で行う確認作業を絞り込んだ。AR(拡張現実)も活用し、タブレット端末でホームにBIMを実寸で重ねて確認した。

 施工では、工程管理ソフトとBIMをひも付けた施工ステップを導入し、「工程表を変えるたびに新しい施工ステップを自動作成するため、現場の進捗管理に使いたい」と見据える。関係者の調整や新規入場者教育に活用している。

■統合モデルで干渉チェックを効率化
 人工地盤は駅ビルと一体のため、杭や鉄骨と設備の取り合いが複雑になる。21年4月から始める人工地盤の鉄骨建て方工事に合わせ、梁のスリーブの整合チェックなどを急ピッチで進めている。問題があると発注者と受注者が一堂に会する調整会議を設け、その場で問題を解決する。岩崎和明JR東日本東京工事事務所中央開発副課長(現総武・東北開発課)は「今後は計画・設計段階から電気設備工事の関係者も参画し事前に問題解決を図りたい」という。

 工事が進むと人工地盤の仮設構台を軌道の間に設置するため、運転士の見通しや電化柱の離隔、建築限界、架線の位置の把握などがますます重要になる。岩崎副課長は「BIMを活用し、運転士や駅員も含む関係者が将来を先取りして問題解決するスキームを構築したい」と意気込む。

 JRE-BIMを監修する矢吹信喜大阪大大学院教授は「BIMで工程管理を円滑化すればコスト管理につながる。5Dにすると工事の予算と実績管理が容易になり、コストダウンと工期短縮につながる。特に民間開発はBIMを使い利益を出すことが重要になるだろう」と先を見据える。

BIMで見える化する「中野駅西側南北自由通路・橋上駅舎等事業」

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