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5月4日 土曜日

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【評価の声も】球磨川流域治水協議会 流域の治水対策メニューとして流水型ダムなどを提示

 18日に開かれた球磨川流域治水協議会で、2020年7月豪雨で被災した球磨川流域の治水対策のメニューとして、新たな流水型ダムのほか、堆積土砂の撤去・河道掘削、引堤、輪中堤・宅地かさ上げ、遊水地、市房ダム再開発などが示された。

今回提案した「河川区域での対策」実施個所案(国、県管理河川)


 河道掘削は、早期に水位低下効果を発現させるため被害が大きかった中流部と人吉地区で進める。引堤は、渡から人吉地区の一部区間で、今次洪水の検証結果から堤防法線の変更により水位低下効果が発揮される範囲に限定して実施する方針だ。

 輪中堤・宅地かさ上げは、中流部の川沿いのわずかな平地を利用して形成された集落について、今次洪水と同規模の洪水に対して家屋浸水をなくすため、河川区域での対策実施後の水位(計画高水位+余裕高相当)を目標に実施する。

 遊水地は、中流部と人吉市街部で効果を発揮するよう、遊水地の配置を検討。人吉地点上流の遊水地は工事費との関係で毎秒300m3程度の洪水調節を可能とする。

 市房ダムは、洪水調節能力を強化させることを目的に放流設備の改造と洪水調節容量の増強を段階的に実施する計画。まず、放流能力が著しく低下する貯水位標高270m未満における放流能力の増強のために放流孔を増設する。合わせて堆砂対策と放流水の濁度改善対策を検討する。次に必要容量を確保した上で、下流の水位をさらに下げるための洪水調節操作ルールを変更する方針だ。

 新たな流水型ダムは、施設能力を最大限活用した洪水調節施設を検討する。貯水容量は、現行の川辺川ダム計画の利水容量2200万m3を洪水調節容量へ振り替えて有効活用することが可能とし、この場合、洪水調節容量は1億0600万m3とした。また、洪水吐きにゲートを設置することで洪水調節量のコントロールを可能とする。環境への影響に最大限配慮した形式・構造を選定する方針だ。

 これら対策による治水効果は、20年7月豪雨のピーク流量毎秒7400m3に対し、流水型ダムで2600m3減、市房ダム再開発で約200m3減、遊水地で約300m3減とし、4300m3まで引き下げ可能とし、さらに河道掘削・引堤で水位低減効果も期待されるとした。

 事業スケジュールは、今次洪水による堆積土砂の撤去は速やかに完了させ、引き続き河道掘削、引堤、輪中堤・宅地かさ上げなどをまちづくりと連携を図りながら進める。遊水地と市房ダム再開発、流水型ダムなどの貯留施設は、速やかに基礎調査や検討に着手する。

 対策メニューについて、流域自治体からは、「明るい希望を持てた」(人吉市)などと評価する声が多く上がった。蒲島郁夫熊本県知事は「時間的緊迫性を持って、流域治水プロジェクトを作成する」とした。プロジェクトは20年度内にまとめる方針だ。

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