一般国道なども含めれば長さ2㎞以下のトンネル工事は例年50件程度の発注があり、これらは掘削土(ずり)の搬出にダンプトラックが使われている。坑内の粉じんや騒音を減らす手段の1つとして、ベルコンの導入を求める声は以前からあった。リース会社、ベルトコンベヤーメーカー、破砕機メーカーの3社が手を組むことで、レンタルへの道筋が整った。
「実は、日本のトンネル現場には再参入となる」と、宇部興産機械破砕機グループの藏成和樹グループリーダーは明かす。1990年代に日本国内でトンネル工事向け破砕機を世界で初めて納入したが、その後はコストの部分が折り合わず採用には至っていない。今回提供するメッツォ社(フィンランド)の移動式破砕機は海外のトンネル工事では豊富な実績を誇るだけに、レンタルの枠組みが整ったことは営業面でも「大きな一歩」と受け止めている。
日本コンベヤにとっても同じだ。営業部の駒田弘明部長は「これまで明かり部が中心だったが、坑内にも事業領域を広げられる」と期待を込める。明かり部の土砂搬送では14㎞もの長距離輸送に加え、1時間に1万7500tという大容量の搬送実績を誇るだけに、坑内から明かり部までの一貫したベルコン体制を提供できる強みも生まれる。
3社が埼玉県入間市の骨材置き場で4月に開いた見学会では、破砕機の性能確認に加え、ベルトコンベヤーのベルト損傷を事前に把握できる装置などが紹介された。ゼネコンからは大手・準大手を中心に19社約100人が参加し、関心の高さをうかがわせた。提供を始めたベルコンシステムは既に2現場への導入が決まったが、いずれもトンネル長さが5㎞以上となり、従来のバイバックで契約を結ぶ予定だ。3社は見学会を契機に、レンタルでの売り込みを本格的に始めた。
移動式破砕機は、原石供給口の高さを2.4mに抑え、サイドダンプの運転手が供給口を見ながら投入できる。従来タイプは4.8mもあり、作業性を大幅に向上させた。ベルトの損傷把握システムはレーザーの反射により、5mm以下の細かな傷も検知できる精度を持ち、ベルコンの安定操業には欠かせない。
レンタルの実現は、これまで採用が難しかった長さ2㎞以下のトンネル工事でもベルコンを採用できる道筋をつくるが、ユニットやパーツの共通化による休転期間の短縮に加え、修理費用の低減も見込まれる。ダンプ輸送の事故リスクを低減できるメリットも生まれるだけに「レンタルのニーズは予想以上に高い」と、3社は口をそろえる。短距離だけでなく、長距離トンネルでもレンタルを選択する現場が出てくる可能性もありそうだ。