【i-Con2021④】JR東日本 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

B・C・I 未来図

【i-Con2021④】JR東日本

 建設工事の飛躍的な生産性向上を目指すi-Constructionが、鉄道工事の分野でも積極的に展開されている。建設工事や維持管理、安全対策などに、BIM/CIMやAI、レーザセンサなど最先端の技術を鉄道工事に最適化し、業務の省力化や効率化などの生産性向上につなげている。積極的にICTの活用を進めているJR東日本とJR西日本の最新の取り組みを紹介する。


レーザセンサを利用した転落検知システム/渋谷駅で検証開始

 JR東日本建設工事部は、レーザセンサを利用した転落検知システムを、大規模な駅改良工事が進む渋谷駅の山手線外回りホームに1月から導入した。AI・列車停車装置との連動なども視野に入れ各種データを収集する。得られた知見をもとに、システムの確立を目指したうえで他駅への導入拡大を検討していく。

◆転落検知マットの代替に
 同社はホーム転落時の対策として、人の転落を検知すると列車に停止指示を出す「転落検知マット」をホーム下に設置している。駅改良工事では、工事の進捗に伴い転落検知マットを撤去することがあり、大規模な工事になると撤去の期間が数年にわたることもある。そのような場合に安全レベルを落とすことのないよう、転落をレーザセンサにより検知する代替システムを検討、JR東日本コンサルタンツが開発を担当している。

 システムは、ホーム下に設置したレーザセンサが一定の時間遮られることによりホームからの転落を検知し、列車への停止指示を出す。

レーザーセンサの概要


 これまで飯田橋駅改良工事でレーザセンサを試行導入し、実際に転落した人をすべて検知できた一方で、人以外の小動物を検知してしまうこともあるなど課題も得られた。

◆データ収集し安全対策に活用

センサー本体

 飯田橋駅改良工事で得られた知見を踏まえ、工事が最盛期を迎えている渋谷駅を次のフィールドにして各種データを収集する。建設工事部鉄道工事マネジメント推進プロジェクトは「渋谷駅は利用客が多く、ホーム上に転落防止と転落時の対応のために警備員を配置しているが、AI・列車停止装置と連動したシステムを開発する事で、安全性を維持向上しつつ配置人数の削減やコストダウンについても検証する」予定だ。

 他駅への導入拡大を想定し、「駅の形状や利用者数、人の流れを考慮した上で、ホームの安全対策の一つとして導入していきたい」と将来を見据える。

センサー設置状況(飯田橋駅)






鉄道クレーン車運転シミュレーター/最新クレーン いつでも訓練/現場の対応力高める

 JR東日本東京工事事務所は、最新型の鉄道クレーン車を2台所有し、鉄道工事における線路上の重量物の一括架設・撤去などで、大幅な生産性向上を実現している。さらに鉄道クレーン車運転シミュレーターを導入し、社員の技術力と安全レベルの向上を図るとともに、甲種鉄道車両輸送(甲種輸送)の導入により、施工エリアをJR東日本全域に拡大した。


◆鉄道クレーン車の施工エリア拡大
 鉄道クレーン車は、鉄道工事特有の条件である架線下で重量物を吊り上げることができる。吊荷のまま線路上を走行できるほか、水平吊りで大きな吊能力を発揮し、アウトリガーを設置すれば2線隣への旋回作業も可能だ。線路切換工事の分岐器の撤去・敷設、工事桁の架設などで大きな効果を発揮している。

運転シミュレーターでの訓練の様子


鉄道クレーン車

 担当している同工事事務所操軌課では、運用計画、現場調査、施工計画の検討だけでなく、携わる社員が必要な資格を取得し、実施工において運転操作、玉掛作業まで自ら行うのが大きな特徴だ。

 これまで主に首都圏における東京工事事務所、支社の工事に従事してきたが、機械化施工による生産性向上のニーズの高まりを受け、東北、上信越エリアの工事にも従事できるよう遠方地への高速輸送が可能な甲種輸送を導入した。現在はJR東日本エリア全体で活躍している。




◆シミュレーターで施工内容を再現
 これまで鉄道クレーン車運転操作の訓練は、川崎貨物駅構内にある鉄道クレーン車の基地内で実機を用いて実施していた。しかし、クレーン車が基地から不在となる期間は訓練できないため、鉄道クレーン車の利用機会が増加するにつれ、訓練実施そのものに課題を抱え、その解決が求められていた。そこで実機がなくても基本操作の習熟、技能の維持・向上ができるよう2019年に同工事事務所内に「鉄道クレーン車運転シミュレーター」を導入した。

 運転シミュレーターは本物さながらの運転席を設置し、3次元モデルでリアルに再現した複数の施工内容を4画面に映し出し、実機と同じ視点で訓練する。実際の施工に必要な各種吊治具もモデル化し、オペレーターの視点で実施工と同じ動きを再現している。

 さらに通常は体験できないクレーン車転倒の訓練モードも作成し、シミュレーターだからこそ体験できる要素を盛り込んだ。作業指揮者用のトレーナーデスクも備え、ブームの旋回や伸縮など指揮者とオペレーターが連携して行う作業も訓練できる。



◆安全で効率的な施工にレベルアップ
 操軌課軌道計画・操機グループは「機械化施工拡大による生産性向上やコストダウンを確実に果たすため、運転シミュレーターを活用し、クレーン操作のさらなる技能向上を図る。さらに各現場の状況を踏まえた多様な訓練モードを活用し、安全で効率的な施工のさらなるレベルアップにつなげ、線路切換工事など難易度の高い施工を確実に推進したい」と意気込む。

シミュレーター映像





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