【記者座談会】建築学会次期会長候補に田辺氏/建築学会賞が決定 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

公式ブログ

【記者座談会】建築学会次期会長候補に田辺氏/建築学会賞が決定

A 日本建築学会の次期会長候補者に田辺新一早大教授が選ばれたね。

B 5月31日の通常総会で第57代の会長に就任する。学会の会長には、これまで構造系と意匠、環境工学などの計画系が交代で就任してきた。今回も構造系の竹脇出現会長の後任として計画系の田辺氏が就く。明確なルールはないものの、これまでのセオリーが当てはまった格好だ。

A 田辺氏はどのような所信を表明しているのか。

C 会長・副会長・監事候補者選挙の所信表明では、ウィズ・アフターコロナ時代における建築界の新しい発展を強調した上で、「新たなプラットフォーム構築」「複合災害に対する備え、2050年脱炭素社会実現への貢献」「学術・技術・芸術分野の国内外発信力向上」「学会活動のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進」の4点を挙げている。

D 新たなプラットフォーム構築では、2016年4月に学会が公表した「建築の未来への貢献-これから10年のビジョンと中長期計画-」の中間評価で順調に推進していると評価されたストック社会への移行や、地球環境問題への対応、大災害対応型の防災・減災技術の整備をさらに発展させる。一方、多様な人材が活躍できる場の創出や、研究・開発戦略を策定する組織の機能強化、委員会の適切な統廃合については厳しい評価だったことから、組織に関してはPDCA(計画・実行・評価・改善)の必要性を指摘している。

新型コロナウイルス感染症の流行で、建築会館(東京都港区)の運営などに大きな影響が及んでいることから、中長期財政を含めた検討も進める

建築が果たす役割は「モノ」から「コト」へ

C 建築会館の運営については、新型コロナウイルス感染症の流行で、大きな影響が及んでいることから、中長期財政を含めた検討も進める方針だ。学術・技術・芸術分野の国内外発信力向上では、世界的な潮流である学術論文データのオープン化などを推進し、国内外への発信力を向上させる。また、社会の信頼に応える建築の設計者・施工者の選定方式を検討するタスクフォースの結果を受けた支援組織について検討する予定だ。

D DXの推進に向けては、タスクフォースを設置して、大会、研究集会、シンポジウムや支部を含めた学会活動の新たな発展に貢献する基盤整備に意欲を示している。コロナ禍が収束の気配をみせない中、新たな建築界の発展に向けたリーダーシップに期待したい。

A ところで日本建築学会賞などの受賞者が発表されたが、今回の特徴は。

E 学会賞の作品部門は、応募があった51作品の中から候補8作品を選定し、現地審査を経て「島キッチン」「上勝ゼロ・ウェイストセンター」「京都市美術館(通称・京都市京セラ美術館)」が選ばれた。京都市美術館は日本建築家協会のJIA日本建築大賞にも選定されており、ダブル受賞となった。島キッチンは仮設ではないものの非常に簡易な構造でアートに近い。上勝ゼロ・ウェイストセンターは、丸太材の廃材を一部使用するなど、建設に当たって廃材を出さない、地域資源を活用するという観点で徹底的に検証された。京都市美術館も含めて3件とも従来のシンプルな新築ではないのが大きな特徴だ。

F 島キッチンは半屋外の薄い屋根が架けられた「場所」の建築で、地域住民とボランティアスタッフによる定期的なメンテナンスが地域コミュニティー活動の活発化に貢献した。建築家が地域社会に果たす役割の可能性を広げた点が評価された。

A 「モノ」より「コト」に建築が果たす役割が評価されたということが言えそうだね。環境配慮や地域の活性化に向けた建築界のさらなる活躍に期待したい。



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら