【強風の影響なし】風力発電を安全・コンパクトに解体 "マトリョーシカ工法"とは? | 建設通信新聞Digital

4月20日 土曜日

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【強風の影響なし】風力発電を安全・コンパクトに解体 ”マトリョーシカ工法”とは?

 再生可能エネルギーが本格的に促進され、昔つくられた小型で発電効率の低い風力発電設備の建て替え需要が増えている。一方で、周囲の環境や解体費用などがネックとなり、積極的な建て替えに懸念が出てきている。そうした状況の中で、ベステラは安全・安心かつコンパクトに解体が可能な「マトリョーシカ工法」を開発した。

 従来の工法は、強風などの自然環境に左右され、工期の遅延により重機コストの増加を招くことがあった。これに対して、マトリョーシカ工法は、強風などの自然環境の影響を受けにくく、大型重機を使わずに工期を順守することができる。

 ロシアの代表的な民芸品であるマトリョーシカ人形の特徴を応用した工法だ。マトリョーシカ人形は胴体の中央で上下に分割でき、その中には一回り小さい人形が入っている。これが何回か繰り返された入れ子構造になっている。

工法はマトリョーシカ人形の入れ子構造を応用した


 工法の概要は、初めに外部足場を設置し、タワー内部にタワー上部のジャッキダウンシステムを設置する。タワーのジョイント近傍を水平に切断し、切断後のタワー部を内部へ降下させ、基礎上に着地させる。すると、タワーは先細り(テーパー)形状となっているため、上部のタワーが下部にすっぽりと納まることになる。ジャッキによるタワー上部の降下と撤去を繰り返すことで、タワーの内部にコンパクトに収めていく。タワー降下作業が完了後、ブレードの撤去作業を実施し、工法は完了する。

解体前

解体中


 同社の蓄積した技術や経験を生かした同工法は、大型重機を使わないため強風などの影響を受けなくするとともに、振動・騒音が発生しない環境に優しい工法で、特許を出願中だ。

 特許工法の開発は、専門の部署である技術開発室が担当しており、各現場から出たアイデアを基に工法として形にする体制を整えている。

 吉野佳秀会長は「全体の重みをジャッキで支えるため、重心がどこにあるのか正確に分からなければならない。重心がタワーのセンターにある風車だったら、この工法は極めて効果的だ」と自信をのぞかせる。

吉野会長


 続けて「これからは、風車の解体が大きな仕事になるだろう。世界的には30万基以上あり、日本では2500基くらいある。それを20年で更新すると、年間で100基くらいずつ更新していかなければならない」と見通す。

 風力発電設備の建て替えの世界に参入することで、「つくった人ではなく、“解体する人”の解体の仕方を見てほしい。いままでの解体はつくった人が行ってきた。そうではなく『解体する人の解体の仕方はこんなに合理的なんだ。しかも安全・安心して任せられるんだ』ということを見てほしい」と語る。

 また、「われわれも進化していかなければならない。過去の工法と、これから新しく生み出していく工法の両輪で取り組まないと、勝ち残っていくことはできない。そのためには顧客が求める工法を提案する必要がある」と将来的な成長に向けて道筋を描く。



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