【健康建築】自然光に似た照明で睡眠の質向上? 室内照明と身体リズムへの影響を検証 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【健康建築】自然光に似た照明で睡眠の質向上? 室内照明と身体リズムへの影響を検証

 室内照明の照度(明るさ)や色温度(色味)が、その室内で過ごしている人の健康にどのような影響を与えるのか――。東京都市大学の小林茂雄建築都市デザイン学部建築学科教授らは、オフィス勤務や在宅勤務のワーカーを対象とした調査、寝室の照明を使った実験を行い、室内照明の照度と色温度を自然光の変化に似せて調節すると、睡眠の質が高まることを示した。

 小林教授らが、25-59歳の在宅勤務などリモートワークを導入している295人と、していない305人の合計600人に調査したところ、コロナ禍以降に生活リズムの乱れを感じた人は、リモートワークを導入している人で27.5%、していない人で13.4%だった。この差の原因として、小林教授らは浴びている光に着目し、オフィス勤務・在宅勤務中に浴びる光の照度・色温度を計測した。

 オフィス勤務のワーカーが午前10時-午後8時までに目の位置で浴びる照明の照度は、217.4-322.5ルクスだった。対してリモート勤務のワーカーは89.2-187.9ルクスと照度が低かった。色温度は、いずれも自然光に対して色温度の高い(白い)光を多く浴びていた。

 この結果を基に、光の影響で睡眠が阻害され生活リズムが乱れたと仮定し、睡眠を阻害しない適切な照明条件の検証を行った。検証では、通常照明を使った寝室と、自然光の照度と色温度を再現するように自動調光する照明を使った寝室を比べた。それぞれの照明の寝室で3日間連続過ごした後の5日間、20代の4人の被験者から睡眠時のデータを取得した。

実験に使用した通常の寝室

自動調光の照明を設置した寝室


 自動調光する照明は、就寝時間と起床時間を被験者が設定すると、就寝予定1時間前から暖色光(2700ケルビン)で空間全体を薄暗い明るさ(枕元1ルクス)に照らし、日没時の自然光に近い状態を再現した。就寝時には消灯し、起床設定時刻の30分前から徐々に照明が点灯する。

 結果、睡眠時間全体の長さに有意差は出なかったが、通常照明の寝室では深い睡眠が平均77分、自動調光では平均89分と差が出た。睡眠時間全体のうち深い睡眠時間が占める比率は、20代では20-25%が適切とされるが、通常の照明の寝室では19.7%、自動調光では22.9%となり、自動調光の寝室の方が睡眠の質が高かった。

 小林教授は、自然光に似た照度や色温度で推移する光を浴びると睡眠の質向上につながるといえるが、オフィスワーカーはそのような光を十分に浴びていないこと、在宅勤務の方がより深刻な状況である傾向を指摘した。



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