【求人数・賃金ともに上昇中】首都圏の建設業雇用環境が好転 コロナ禍でも旺盛な理由とは | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【求人数・賃金ともに上昇中】首都圏の建設業雇用環境が好転 コロナ禍でも旺盛な理由とは

 2020年度平均の有効求人倍率が前年度から大幅な下げ幅となるなど新型コロナウイルス感染症拡大を理由に雇用環境が悪化する中、首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城、山梨の1都5県)建設業の雇用(求人・求職)環境は、技術者、技能者ともに前年度から好転していることが、東京労働局の調査で浮き彫りになった。求人賃金も東京、埼玉を除く4県は下限額で最大2万円強上昇するなど、人材確保競争激化の裏返しで賃金アップという処遇改善が続いている。

建設業界にとって処遇改善への大きな要因には、国が本腰を入れて建設キャリアアップシステム(CCUS)促進に力を入れ始めたことも大きい。その結果、コロナ禍以前は頻繁にCCUS加入のための説明会が開かれていた。写真は2019年9月、山梨県内での説明会


 建設企業の求人は全国的にも旺盛な状況が続く。厚生労働省が4月末に公表した、「3月及び20年度の一般職業紹介状況」で、20年度平均の有効求人倍率は前年度から0.45ポイント下回る1.10倍にとどまった。ただその中、「建設業」の新規求人状況は他産業の落ち込みを補う形で、3月の新規求人数は前年同月比16.3%増と12業種中、唯一2桁の増加となった。「建設業」はこれで3カ月連続の2桁増、4カ月連続の増加を維持している。

 就業地別の3月有効求人倍率が東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県でいずれも求人数を求職数が下回る1倍以下になる中、建設業の雇用(求人・求職)環境の好転は、最大の建設市場である首都圏でも顕著だ。

 東京労働局がまとめた東京都内の21年3月「求人・求職のバランスシート」では、「建築・土木技術者」の有効求人数が前年同月に6000人台まで落ち込んだが7053人と回復、求職者数も前年同月比で200人程度増加した。技能者が分類される「建設・採掘の職業」も前年同月比1300人程度求人数が増加、求職者数も300人弱増えた。

 求人・求職の増加は、求人賃金の上昇にもつながっている。東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城、山梨の1都5県の21年3月の職種別賃金では、「建築・土木技術者」求人賃金の下限額が前年同月比較で減少したのは東京と埼玉だけで、千葉の2万0277円を筆頭に、茨城7758円、神奈川6830円、山梨3961円とそれぞれ増加した。

 一方、「建設・採掘の職業」の求人下限額も、東京、千葉、神奈川を除く、埼玉458円、茨城5263円、山梨4679円とそれぞれ増加した。ただ千葉県の求人下限額は1万2310円と大幅に減少した。

 雇用統計上からも新型コロナの影響が鮮明になる中、建設業の雇用環境が他業種ほど悪化していないのは、売り上げに直結する国内建設市場が比較的堅調に推移していることが背景の1つとしてありそうだ。

 例えば1都5県の、土木市場の傾向を示す前払い保証3社による「20年度公共工事前払金保証統計」で前年度よりも増加したのは、茨城、埼玉、千葉の3県。また減少した東京、神奈川、山梨の落ち込み幅も小さく、今年度は防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策初年度として市場規模維持・増加に期待が集まる。

 さらに建設市場の過半を占める建築市場についても、3月の都道府県別新設住宅の戸数と床面積は、1都5県すべてで前年同月比増加となった。47都道府県で増加したのは、21都道府県。また都市圏別で建築物の床面積、新設住宅の戸数・床面積のすべてで増加したのは首都圏だけで、首都圏の建築市場好調を見せつけた格好となっている。

 ただ、全国の20年度新設住宅着工戸数は、81万戸台とリーマン・ショック直後以来の低水準にとどまっており、雇用環境の先行きは今後も注視する必要がある。



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