【基礎知識は将来の助けに】全日本建設技術協会『基礎から学ぶインフラ講座』出版 | 建設通信新聞Digital

4月28日 日曜日

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【基礎知識は将来の助けに】全日本建設技術協会『基礎から学ぶインフラ講座』出版

 全日本建設技術協会(大石久和会長)は、河川や道路、港湾、都市公園、下水道に関する管理区分と事業制度、技術的基準のほか、入札契約制度の概要、趣旨にも触れた書籍『基礎から学ぶインフラ講座』を出版した。インフラ分野が多岐にわたる建設事業の特性上、技術者は専門性という隘路(あいろ)に陥りやすいだけに、技術力、そしてインフラの質を高める上では俯瞰(ふかん)的に事業全体を把握し、担当業務の位置付けを理解する能力が求められる。同書には「そのために身に付けなければならない基礎的な知識が詰まっている」という、大石会長に出版の目的などを聞いた。

大石久和会長


 『基礎から学ぶインフラ講座』は、大石会長が編者として総論部分の「日本の自然条件」「インフラ整備の変遷」を執筆した。各論に当たる河川、道路、港湾、都市公園、下水道、入札契約の内容については、「基礎知識の習得に苦労している」という会員の声を受けて始めた同協会の機関誌(月刊『建設』)での連載をベースとし、最新の統計値や制度改正などを反映しながら、編集作業を進めた。

 大石会長は、「国や地方自治体を問わず公共発注機関では技術職員が少なくなり、(一人ひとりが)日々の業務に追われるようになった」ことで、「以前は先輩職員との雑談の中でインフラの基礎知識を学んでいたが、そういった機会が失われつつある」と指摘する。

 こうした背景を踏まえて「書籍には若手職員が習得しなければならない、さまざまなインフラの基礎知識を盛り込んだ」とし、この基礎知識こそが「将来の助けになる」と力を込める。

 建設技術者の多くが「専門分野を深くしなければならないと思い込み、その迷路でもがき、事業の全体像が見えなくなってしまう」ため、網羅的にインフラの基礎知識を習得することで「早い段階から自身の業務が事業全体でどういう位置付けなのかを認識できる。その能力が備わっているか否かで今後のキャリア形成は大きく変わっていく」からだ。

 「常に一段高見に立って、広いスコープ(視野)で自身の業務と向き合う」姿勢は、「仕事の意義に対する理解を深める。それはやりがいにつながり、インフラの質の向上にも結び付いていく」とし、「ベテランになればなるほど、有効に機能する」と強調する。

 出典を多く紹介していることも大きな特長で、「道路、河川など、何から勉強すればいいかわからない人でも入りやすい内容となっている」ため、購入者からは「自分が担当している事業についてわかっているつもりだったが、改めて知ることも多い」「他分野の基礎を勉強する上で参考になる」「他の課と調整する際に役立っている」などの肯定的な意見が多数寄せられている。

 同書は国、都道府県、市町村に勤務する技術系公務員が中心の同協会会員を対象に出版したものだが、「高校生や大学生にも読んでいただきたい」という。大石会長自身、「高校2年生の時に漠然と屋外で働く仕事をしたいと思った。土木か建築で悩んだが、自然が相手である土木を選んだ。いま思い返せば、事前に基礎部分が学べていれば、インフラのすばらしさにより早く気付けていただろう」と振り返り、「この書籍で得た知識を自分のものとして誰かに話してほしい。そうすれば、インフラに対する(国民)理解の輪が確実に広がっていく」と副次的な効果に期待を寄せる。

 さらに、公共発注機関の職員や学生だけでなく、建設会社やコンサルタントなど民間企業の社員にとっても「自分が携わる堤防や道路が社会にとってどのような意義があるかを理解して設計や施工をすることは、やりがいにつながる」と語り、発注者との打ち合わせなど日常業務で疑問が生じたときに「実務的にも役に立つ内容」であり、民間企業での活用も薦める。

大石会長は編者として総論部分の「日本の自然条件」「インフラ整備の変遷」を執筆した


 定価は1100円(税込み)。問い合わせ・申し込みは同協会事務局(電話03-3585-4546)。



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