【コンテンツ品質安定化へ】宣伝用3D制作で新会社「TOPPAN EQUATOR」 ベトナムに設立 | 建設通信新聞Digital

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【コンテンツ品質安定化へ】宣伝用3D制作で新会社「TOPPAN EQUATOR」 ベトナムに設立

 凸版印刷のグループ会社トッパン・コスモは4月1日、建築、インテリア、設備機器など向けに、宣伝用3Dコンテンツを制作する新会社「TOPPAN EQUATOR(トッパン・イクエイター)」をベトナムに設立した。VR(仮想現実)などの活用について、現状の制作側は“コンテンツの質にばらつきが出がち”といった、業界全体の課題があるという。これを踏まえた新会社の戦略について、竹中孝一代表取締役会長CEO(最高経営責任者)と、望月寛之CSO(最高戦略責任者)に聞いた。

 トッパン・イクエイターの主な株主構成は、トッパン・コスモが65%、共同設立者のスタジオテック(大阪府羽曳野市、佐野眞士代表取締役)が25%、同じく共同設立者の杉山貴伸Nu Design and Supply(NDS社)社長が6%となっている。トッパン・イクエイターの戦略は、この3者の連携による人材育成、QC(品質管理)、営業力の組み合わせを基盤とする。

 新会社設立のきっかけは望月CSOの構想だった。まず「宣伝用コンテンツはオーダーメイドで、さらに3Dコンテンツは現状ソフト上での手作りだ。供給を増やす場合は、クリエーターを増やす必要がある。しかし現在、需要に対して3Dコンテンツのクリエーターは不足している。3Dに特化した制作会社も少なく、人材を安定的に育成する体制も整っていない。このため、コンテンツを外注すると品質にばらつきが出てしまう」(望月CSO)という制作側としての課題認識があった。

望月CSO


 これに対し「3Dに特化した制作会社を設立して、人材育成やQCの体制を整え、トッパン・コスモの建材など向け営業力を組み合わせれば、事業拡大が見込める」(同)として、トッパン・イクエイターが設立された。

制作事例


 3Dコンテンツの人材育成の体制は、スタジオテックの持つ3DCG(コンピューターグラフィックス)の技術力や、杉山氏が大学やベトナムでデザインを指導してきたノウハウで構築する。「ベトナムには3Dコンテンツへの関心や意欲の高い若者が多い。彼らに日本の技術や品質管理を伝え、安定した品質、低コスト、短納期の3Dコンテンツを提案する」(竹中会長)との背景から、ベトナムを拠点とした。

竹中会長


 QCの体制は、クリエーター5人と品質や進捗を管理する1人の6人1チームでの稼働を基本とする。「コンテンツの質にばらつきが出る原因は、クリエーターがどんなインテリアや空間を好むかのセンスが品質に影響する面もある。センスは、技術と違って育てにくいので、チームで制作物や進行をチェックすることで品質を安定させる」(同)と体制づくりを進める。今後、トッパン・イクエイターは国内向けから受注を開始するが、2025年にはASEAN(東南アジア諸国連合)も含め20億円の売り上げを目指す。「売り上げ20億円の実現のため、クリエーターだけで300人ほどは必要」(同)と人材育成・体制構築を見込む。

 国内では3Dコンテンツ制作を請け負うほか、「BIMは3DCGを作る際に活用できると非常に効果的なのだが、まだ大手以外は導入していない顧客も多い。そこでこちらからBIM活用など技術的な提案もしていきたい」(同)と構想する。

 ASEAN進出は「まず、東南アジアに進出しているゼネコンにBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)として3Dコンテンツの提案を考える。将来的には現地の建築、インテリア業界も狙いたい」(同)との道筋を描く。

 コロナ禍については、ベトナムでの指導がオンラインに限定されるなどの制約も指摘しつつ、「360度カメラで撮影したショールームは魚眼レンズのようになっていて、長時間閲覧していると気分が悪くなる人もいるが、そういうコンテンツを加工して改善するなどの需要も出ている」(同)と新しい需要の例も挙げた。



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