【BIM2021】大和ハウス工業×応用技術 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【BIM2021】大和ハウス工業×応用技術

 大和ハウス工業がBIM導入のステージを着実に上げている。先行する建築系事業ではオートデスクの『Revit』をBIMプラットフォームの基盤に置き、設計から施工、維持管理までの各部門をつなぐ一貫BIMの確立を目指している。既に設計段階のBIM導入率はほぼ100%を達成し、これから施工段階の導入フェーズに入る。各部門がより効率的にBIMと向き合えるように、応用技術が提供するRevit支援パッケージ『BooT.one』の全面導入を決めた。その狙いについて、大和ハウス工業の南川陽信上席執行役員、宮内尊彰建設デジタル推進部次長、応用技術の船橋俊郎社長、高木英一執行役員toBIM推進部長、高取昭浩テクニカルディレクターの5人に聞いた。

――大和ハウス工業のBIM導入状況は

 南川 建築系、集合住宅、戸建住宅の各事業でBIMに取り組んでいるが、中でも建築系と集合住宅は2020年度に設計段階の導入割合がほぼ100%に到達した。設備設計や見積もり関連で課題はあるが、進捗は計画どおりに進み、これからは施工段階へのBIM導入が本格化する。

 宮内 課題を一つひとつ地道に潰してきたことが近道になった。BIM研修も6000人の受講が完了し、コロナ禍の現在もオンライン研修に切り替え、組織のBIM対応力を引き上げている。実践的な課題や要望が出始めており、組織として着実にステージは上がっている。

 南川 17年にBIM推進室を発足した際には5人体制だったが、18年にBIM推進部に格上げし、20年からはBIMを出発点にDXへの展開を見据え、建設デジタル推進部として総勢160人体制にまで拡充した。

 宮内 DXに向かうデジタル改革の基盤にはBIMがある。BIMから始まるデジタル戦略は各部門が密接に連携し合い、DXへとつながる。それが確立を目指している『Daiwa Smart Control基盤』である。

 南川 国を挙げてデジタル化の機運が高まっていることも社内の推進力になっている。BIMへの意識も大きく変わった。BIM導入の効果をより最大限に引き上げるため、BooT・oneの採用を決めた。

 宮内 これまでは社内でBIM導入に向けた便利ツール(Drex)を開発してきた。これをBooT・oneに統合することで、開発にかかる費用や時間を削ることができると判断した。汎用的な機能はDrexから切り離し、BooT・oneで実装することもでき、建設業界の多くの方へ活用を広げていくことができる。グループ全体でBooT・oneを活用していく。


――応用技術にとっては

 高木 BooT・oneはユーザー(利用者)からリクエストをもらい、それを新機能として実装し、ユーザーと共に成長していくシステムとして認知されている。社を挙げてBIM導入を推し進める大和ハウス工業からは、実践的なリクエストが数多く出てくると期待している。

 高取 本気でBIMと向き合う人たちの悩みは普及へのヒントであり、裾野が広く統一したルールで社を挙げて取り組む大和ハウス工業からのリクエストはBooT・oneにとっても、日本の建設業界にとってもプラスだ。

 高木 組織が大きいほど、変わることへの抵抗感は強まるが、乗り越えた時に得られる効果はそれ以上に大きい。BooT・oneは4000ユーザーを超えている。大和ハウス工業と取り引きする協力業者も多く使っており、そうした企業にとっても統一した枠組みで仕事ができるメリットも生まれる。

 船橋 デジタル化の流れは早く、迅速な商品化が問われている。使う人の共通の悩みを解決するBooT・oneは汎用性が高く、建設業のBIM化に貢献していきたい。非競争領域を下支えする役割としてBooT・oneをしっかりと育てていきたい。

 南川 非競争領域については、当社社長の芳井敬一も技術開発の考え方として、業界として使ってもらう協調の意識を大切にしている。皆が使える技術が育たなければ業界の発展はない。現場の課題を皆で乗り越えようというBooT・oneのコンセプトは当社としても賛同している。

 宮内 設計段階のBIM導入が100%になり、これから施工段階への導入フェーズに入る。BooT・oneの活用もまず設計段階が中心になるが、いずれ施工段階にも広がる。BIMの導入を機に、社内では設計部門と施工部門の業務領域について議論しており、BooT・oneの導入をきっかけに、役割分担も明確になってくるだろう。

――BIM導入のポイントは

 高取 どの会社にも組織の壁はある。特にゼネコンの場合、設計部門と施工部門のどちらが詳細図を描くかなど、頭を悩ましている。毎週、大和ハウス工業のBIMコンサルティングを担当しているが、設計部門の意識は高く、詳細図の部分まで担おうと前向きに考えているため、精度の高いモデルができている。今後それを施工部門がどう効率的に使うか。現場の発想力が求められる。

 高木 アウトプットした図面でのやり取りは、せっかくのBIMのメリットを台無しにしてしまう。海外ではモデル承認が一般化しているように、現場におけるモデル活用のアイデア出しがBIM導入を成功に導くかぎになる。BIMパーツの標準化もBIMobject Japan(東京都新宿区)と連携し、充実させており、そうした基盤整備も重要になってくる。

 南川 当社の中でも図面ありきの流れから抜け切れない担当者はまだいる。だが、設計がBIM導入率100%になり、モデル活用の意識は芽生えてくる。これからはモデルありきの流れを定着させたい。BooT・oneはそのきっかけになるはずだ。

 高取 大和ハウス工業の場合、工場との連携もあり、デジタルデータの一貫活用が実現できる。モデル承認の定着は普段のコミュニケーションが大事になってくるだけに、導入率が高まり、情報が円滑に流れ出せば、関係者間の意識も一変するだろう。

 南川 これまでBIM導入に際して設計部門への負荷は大きかった。BooT・oneの導入により、煩雑な作業は大幅に効率化できるだろう。設計モデルで施工ができることが究極の姿。われわれ推進部門としてはそこを到達点として突き詰めていきたい。

――国際規格ISO19650も取得した

 南川 われわれのBIMの枠組みがグローバルスタンダードに沿っているかを確かめる判断基準として考えていた。結果的に業界初となったが、何よりもわれわれが進むべき方向性が間違っていなかったと確認できたことが次への推進力になる。

 宮内 当社の現在地がBIMレベル2にあることも明確になった。最終的には建築生産の各段階でデータを連携するレベル3を目指している。そのためにはあらゆる関連情報のデータベース化が重要になってくる。それを実現できればDXにつながる筋道がきちんと整う。

 高木 BIMのレベル3は社会基盤ともつながり、業界としてのBIMプラットフォームの構築も必要不可欠になる。そのデータ連携を支える役割としてBooT・oneをしっかり成長させ、日本のBIM普及に貢献していきたい。

 高取 自分の仕事がどう変わるか、という視点でデジタルデータと向き合ってほしい。そうした意識がなければ成長はない。道具を変えるということは、根底の考え方を入れ替えることだ。BIMに取り組む企業には大和ハウス工業を参考に、本気でBIMと向き合ってほしい。

 船橋 大和ハウス工業がBooT・oneを全面導入したことは当社にとっても業界にとっても大きなインパクトだ。BooT・oneは垣根のないツールであり、当社はBIMと業界をつなぐハブ的な役割としてこれからも積極的に活動していきたい。

 南川 BIM導入は順調に推移している。応用技術との連携によって、新しい何かが生まれることを期待している。アイデアの融合によって、大和ハウス工業のBIMはさらに進化する。それがわれわれの目指すDXの基盤になることは言うまでもない。

取得したISO19650の審査風景



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