【伸展する関西の建設ICT⑤】レベル3到達へ「つなげるBIM」 大和ハウス工業×応用技術 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【伸展する関西の建設ICT⑤】レベル3到達へ「つなげるBIM」 大和ハウス工業×応用技術

 

◆各部門で正しいモデルの精度向上 ~キーソリューションは“BooT.one”~

大和ハウス工業が、BIMのレベル3到達に向け着実に歩みを進めている。オートデスクのBIMソフト『Revit』を基盤に置き、設計から施工、維持管理までの各部門をつなぐ一貫BIMの確立を進める中で、設計段階では応用技術が提供するRevit支援パッケージ『BooT.one』の全面導入も完了した。大和ハウス工業の宮内尊彰氏(建設デジタル推進部次長)、応用技術の船橋俊郎氏(社長)と高木英一氏(執行役員toBIM推進部長)に、BIMレベル3に向けた今後の方向性などについて聞いた。

 

大和ハウス工業の宮内尊彰建設デジタル推進部次長

 –大和ハウス工業の現在地について

宮内 大和ハウス工業は今、BIMレベル3への到達を目指し、改革を進めている。テーマは「つなげるBIM」への転身だ。それは各部門が意識を持って後工程にきちんとモデルを「つなげる」ことである。BIMの導入率は、既に設計段階で建築分野と集合住宅分野が100%を達成した。施工段階は遅れてスタートしたが、既に2020年度下期には60%まで拡大する見通しだ。

現在は、まさにBIMレベル3への移行期である。分かりやすく言えばレベル1は「見える化」、レベル2は「解る化」、レベル3は「予測化」、そしてレベル4は「最適化」である。今、われわれはレベル2の解る化のフェーズでモデル作成の精度を高めている段階で、並行してデータベース化についても力を注いでいる。

レベル1ではBIMモデルから図面を出力することに力を注いできた。レベル2ではモデルを活用するフェーズになり、部門間の連携を重要視している。連携には図面データのチェックが重要になる。クラウドサービス『BIM360』を使って、部門間のデータ連携を進める中で、意匠から外構、見積もり、工場などへのデータ連携にモデルがしっかりと構築できているかを自動チェックし、正しいモデルとしての精度向上を目指している。

大和ハウス工業のデジタル戦略レベル

 

–正しいモデルとは

宮内 例えば構造のBIM実施率は100%だが、このうち連携可能な高品質モデルは75%、さらに連携に支障がないモデルは60%になる。つまり現在は構造BIMを100%実施していても、当社が目指している「つなげるBIM」としての完全なモデルはまだ60%にとどまる状態ということだ。重要なのは次工程に引き継がれた際に活用できるモデルか否かである。

今後、レベル3に進むとどうなるか。見積もりを例に話をすれば、レベル3の予測化とは、設計初期から概算コストの予測ができ、物件全体の見積もりも管理できるような枠組みである。これまでは感覚や過去物件の資料を参考に算出した粗い見積もりだった。正しいモデル化が実現すれば、誰が見ても同じ概算が出てくる。それが「つなげる」ということである。

部門内だけのモデル活用では効果も限定的になってしまう。後工程を踏まえてモデルを作成しないと最大限にBIMのメリットを得ることはできない。各部門が「つなげるBIM」としてのモデルをきちんと作成できないと、レベル3には到達できない。目標としては22年度末までにレベル3の到達を目指している。

 

応用技術の船橋俊郎社長

–BooT・oneの導入状況は

高木 システム開発が中心の応用技術だが、大和ハウス工業へのBooT・one活用を支援していく中で、近年はコンサルティング的な動き方もしている。これまで大和ハウス工業ではBIMを円滑に導入する便利ツール(Drex)の開発を進めていた。これをBooT・oneに切り替えることになり、BIM導入のキーソリューションとして位置付けられた。これによりグループ会社や協力会社にも広く浸透し始めている。

船橋 いわば大和ハウス工業はBIMのトップランナーであり、日本の建設産業界のデジタル化をけん引する存在にもなっている。その下支え役として、これからも社を挙げて取り組んでいきたい。今後、大和ハウス工業では施工段階の導入フェーズに入る。当社としても現場の声を反映した新たなツールの開発にも力を注ぎ、現場のデジタル化を後押ししていく。

宮内 われわれの生産改革にBooT・oneは欠かせない存在であり、全面導入も完了した。これから施工段階でも活用の幅を広げる。BIM導入は目標として掲げているロードマップの通りに進んでいる。次はレベル2からレベル3へとステージを1つ上げる段階に入る。レベル3以降は大和ハウス工業だけでは成長できない。グループ会社や協力会社も含め、BIMプラットフォームにあらゆる情報が集約され、データ連携がさらに加速していく。その中でBooT・oneについても、もっと間口を広げてもらう必要があり、ともに成長していくことになるだろう。

断面リストツール(BooT・one)

               

応用技術の高木英一執行役員toBIM推進部長

–応用技術の歩み方は

高木 BooT・oneは新バージョンの2.0に移行した。コマンド数は当初の65件から、現在は200件を超えるまでに増えており、今後もユーザーの要望を受け機能強化や新コマンドの拡充を進めていく。大和ハウス工業との連携を進める中で、BooT・oneのステージも上がっていく。今後は次工程を思いやる「つなげるBIM」を意識したコマンドが増えていくだろう。これからはデータ連携の部分にも開発の力を注いでいく。

船橋 当社は大和ハウス工業の全力サポートを進めながら、建設産業界の未来につながるような動き方もしていきたいと考えている。特にサプライチェーンの部分については重要視している。製造に関わる根幹のシステム部分についてアプローチするというよりは、データ連携の入り口部分に対して、クラウドを使って課題を解決するような枠組みになっていくと考えている。

高木 われわれは大和ハウス工業のつなげるBIMの支援ツールとして、さらに存在感を増すため、現在のBooT・one2.0のさらに先を見据えて機能を充実させていく必要があると考えている。22年度中にはその領域に踏み込めるような新しいコマンドを出していきたい。大和ハウス工業の進化に合わせ、われわれも成長していく。最終的にはBooT・oneで対応すべきか、もしくは別パッケージツールのConnecT・oneで対応すべきか、今はまだ結論は出ていないが、より最適な流れを提示したい。

船橋 当社にとってもまさに「つなげる」がキーワードになる。これは昔から意識していることであるが、これからはさらにBIMのボーダレス化が進む中で、建材メーカーなどとの密な連携も必要になってくる。BooT・oneやConnecT・oneという当社のソリューションを生かし、後工程に親切なBIMシステムとして進化していきたい。

高木 当社は17年から誰もがBIMにつながる世界をコンセプトに活動をしている。BIMの普及がさらに進展すれば、より全体の流れを踏まえた視点が問われる。ゆくゆくは設計から施工、維持管理につながる流れ全体をサポートしていくことになるだろう。

船橋 当社としては建築だけでなく、街づくりのデジタル化にも関わっていきたい。スマトーシティ関連では人流シミュレーションなどのソリューションも持っており、そこにBIMの建物データとつながると街全体のデータマネジメントも進められる。

施工モデルと総合仮設計画図

 

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