【豊かに働く】多種多様で多才な人材をバランスよく育成 新日本空調管理本部 | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

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【豊かに働く】多種多様で多才な人材をバランスよく育成 新日本空調管理本部

 新日本空調は、10月から人事制度をこれまでの「職能型」から「職務型(ジョブ型)」に変更する。能力に応じた給与の職能型から、ジョブ型は「事業計画達成のために与えられた仕事の内容や役割、責任の大きさ(範囲)に応じた給与制度となる」と澤村宗隆管理本部人事部長は語る。また、上田和弘管理本部副本部長は「人に対して仕事を与えていたが、今後は仕事に対して人を充てる」とし、発想が大きく変わることを強調する。


 今回の人事制度変更は、多種多様で多才な人材を、さまざまな専門領域で自己のキャリアプランと会社のキャリアパスが有機的に結び付く人的資本の育成と、働き方改革を実現する現場や「事業基盤増強戦略」に基づく事業分野に人材を重点配分することを狙いにしている。

 同社は、目標管理をベースとした現行の職能資格人事制度を1996年に導入し、数回のマイナーチェンジを実施しながら制度を運用してきた。職能資格の制度は、昇格によって給与が上がる日本型人事制度の最たるもので、同じ職能資格であれば日常業務として担当する仕事の責任の大きさや難易度にかかわらず、よほどのことがない限り同じ給与になる。「これが長年の制度疲労として出てきていた。ここを改善すれば社員のモチベーションが上がる」(澤村人事部長)ということを背景に、制度改定への検討を2019年から着手した。

職能資格を捨てる

 こうした社内事情に、ダイバーシティー&インクルージョンという社会的な背景もあって「仕事が同じなら、仕事の大きさによって給与を決めて、年齢、性別、国籍、経験に関係なく、その給与を払うべきとなり、職能資格制度を捨てて、役割に応じた職務型の制度を目指し作業を進めてきた」(同)と説明する。

 ただ、取り巻く就労環境は、欧米のようにドライな環境ではない。欧米型のジョブ型は、職務定義書に示している仕事をこの給与で、 となる。裏を返すと、それ以外の仕事を担う必要はない。また、仕事がなくなれば別の企業に行くという就労環境でもない。

 このため、欧米ジョブ型の良い部分を取り入れ、社員のモチベーションを上げる制度づくりを目指した。「部長や課長の組織体制から、現場の工事代理人など一人ひとりに役割を与えて1年間の事業計画の達成を目指す中、与える役割の大きさによって給与を決めていく」(同)ことが、ジョブ型の導入で最も実施したかったという。

 ジョブ型の運用に当たっては、職務定義書をあまりシビアなものとする予定はない。ある程度は、社員の能力も給与の高さを決めるときの判断材料になるという。

 新入社員にジョブ型は適用しない。若手のときは能力を磨くことに専念してもらい、従来どおり、能力の向上に応じて職能資格を毎年定昇していく。「育成期間を6、7年設け、その中で見極めをして、30歳ごろから人に対して仕事を与えていたことから、仕事に対して人を選ぶ形にする」(上田副本部長)ことで、役割や仕事の大きさに応じたジョブ型となる。大規模現場の所長を務める若手社員も出始めていることから、こうした若手社員がジョブ型で給与をもらえるようにする。

等級は9段階程度に

 10月からの正式運用に向けては、社員の職能資格を「役割等級」や「職務等級」といった新しい等級に当てはめる必要がある。職能型で12段階ある等級(給与)は、ジョブ型への移行で9段階程度になる。「どの仕事、仕事の難易度、どれだけの責任の大きさだと、何段階目の給与になるという目安をつくる。この目安に基づいて、各部門の社員を再評価する。いまの仕事を基本にしつつ、この程度の給与水準が適切だという再評価に必要な準備をしている」(澤村人事部長)。例えば、現場の場合、大規模現場、大規模ではないが難易度が高い現場は9段階のどこに当たるのかを決めることになる。管理職制は「部門長」「部長」「課長」があるため、職位ごとに3つの等級ができる。

 悩ましいのは、非管理職の等級づくりだ。ジョブ型ではキャリアパスが、管理職コースとスペシャリストコースに複線化する。管理職ではないものの、管理職と同程度の難易度の高さや責任範囲での仕事であれば同じ給与になる。職位があるわけではないため、等級づくりは大がかりな作業となる。

上司の再教育が重要

 全社員に対するジョブ型の説明は7月から始まる。組合には説明済みで、職能型よりも「納得感が得られる制度」と肯定的に受け止められているという。また、4月から定年年齢を60歳から65歳に引き上げたことで、60歳以上の社員にはジョブ型を適用している。

 澤村人事部長は「制度の運用が始まってからが大変になるだろう」と感じている。「仕事が変われば給与が変わることから、部下が納得できるよう説明することが上司に求められる」(上田副本部長)からだ。このため「部下を評価する上司側の再教育」(同)を実施する。制度を運用しながら、2、3年を掛けてジョブ型制度をブラッシュアップしていく。さらに、多種多様で多彩な人材活用に向け「えるぼし、くるみんの認定を取得する」(澤村人事部長)。2年程度先の取得を目指して取り組みを進める。さまざまな「人的資本戦略」を展開することで、働きがいのある職場環境を実現させていく。



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