【記者座談会】「エネルギー基本計画」素案、「地球温暖化対策計画」案 | 建設通信新聞Digital

5月4日 土曜日

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【記者座談会】「エネルギー基本計画」素案、「地球温暖化対策計画」案

 2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「50年カーボンニュートラル(CN)」の実現に向け、30年度の温室効果ガスを13年度比46%削減を目指すための「エネルギー基本計画」の素案と「地球温暖化対策計画」の案が相次いで公表になった。エネ基素案の内容は。

 目標となる30年度エネルギーミックスの電源構成は、温室効果ガス排出削減に向け、再生可能エネルギーの比率を36-38%とした。現行目標から10ポイント以上引き上げる。19年度の再エネ比率は18.1%だったことから、倍増にする目標で相当な努力が必要になる。

 再エネ以外の30年度電源構成の内訳は、水素・アンモニアが1%、原子力は20-22%、LNG(液化天然ガス)は20%、石炭は19%、石油などは2%とした。再エネ、原子力、水素・アンモニアを合わせた非化石電源が6割を占める。電源構成には水素・アンモニアを初めて位置付けた。再エネの内訳は、太陽光15%程度、風力6%程度、地熱1%程度、水力10%程度、バイオマス5%程度だ。現行の第5次計画までは積み上げだったが、今回の第6次の素案は30年度削減目標達成に向けた野心的な見通しになった。

 素案に対する委員の意見はどうだったのかな。

 産業界の委員は「国の削減目標から野心的な数字になることは理解できるが、安定供給とコスト面で大変不安を感じる」と述べていた。また、「再エネを増やすのは自然の流れだが、太陽光に偏り費用が増えるのは避けられない。風力や地熱の比率を高めることが必要」「削減目標にあわせた結果で、実現の可能性に欠ける。このような電源構成には反対」などの意見もあった。

21日に経済産業省内で開いた総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 

◆新たなミックス実現には相当な努力

 再エネの導入拡大にはさまざまな課題があるのでは。

 再エネの中で太陽光が有望とされているが適地が限られている。自然環境や景観を損なうとして地域住民が反対することもある。既に太陽光の建設を規制する条例を定めた自治体が130余りある。事前届け出や協議などの手続きを定めているほか、太陽光建設の抑制区域や建設禁止区域を設ける自治体もある。

 地熱は、火山が多いことから資源量は世界3位と豊富だが、大規模投資が必要だ。また、適地が国立公園などのため規制も厳しい。風力は強い風が安定的に吹く場所が適地となる。ただ日本の陸上は平野部の適地が少なく山間部ではコストがかかる。洋上は遠浅の海域が少ないためコストが大きく、漁業関係者との調整も必要だ。加えて環境アセスメント手続きにも時間がかかる。

 30年度のエネルギーミックス実現のハードルはかなり高いといえる。もう一方の温対計画案は。

 50年CNに向けた中期目標として13年度比46%削減目標を計画に位置付けた。エネルギー起源CO2は45%減とするなど、30年度削減目標の内訳を示した。温室効果ガス総排出量の8割を占めるエネルギー起源CO2は、30年度の排出量を6億8000万tとした。内訳は、建設業を含む産業部門が2億9000万t(13年度比37%減)、オフィスなど業務その他部門が1億2000万t(50%減)、家庭部門が7000万t(66%減)などだ。

 政府や自治体、企業、国民がそれぞれ進める取り組みを記載した。産業部門は自主的な排出削減や脱炭素経営などに取り組み、業務その他部門の建築物、家庭部門の住宅は省エネ化を柱の1つにした。省エネの規制強化などで対応していくことになる。



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