【TOTO】浴槽は「リラクゼーション装置」! 無重力の脱力状態に近づくデザインで世界に発信 | 建設通信新聞Digital

5月20日 月曜日

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【TOTO】浴槽は「リラクゼーション装置」! 無重力の脱力状態に近づくデザインで世界に発信

 最先端の生体力学や脳科学で、まるで無重力の空間を浮遊しているようなリラックス感を作り出す--。TOTOが大型のリラクゼーション浴槽『フローテーション・タブ』=写真=を世界有数の住設器具の見本市「ISH」に参考出展したのはことし3月。世界的にヨガや瞑想がブームになっていることを好機に、リラクゼーションという観点から、日本の入浴文化に親しんでもらおうと開発した。「ただのバスタブではなく、お湯の浮力を生かしたリラクゼーション装置として見せれば、海外にも入浴文化を発信しやすいと考えた」と新原登執行役員総合研究所長は説明する。
 この新浴槽は、ゆりかごのように入浴する人を包みこむような形状をしている。でん部の支えで身体の位置を決め、頭をもたせかけるヘッドレストを上下に動かして、2点で身体を安定させる仕組みだ。浴槽に身体を預けると、宇宙飛行士が無重力状態で脱力した状態に近い体勢になり、自然とリラックスできる。身体の温熱効果を高める旋回水流『ハイドロハンズ』も備え、内部の高くなった部分に腰掛ければ足湯もできる。
 開発を担当したのは、総合研究所商品研究部の健康技術研究グループ。人の脳や身体感覚の作用を研究し、浴び心地や浸かり心地などの感性的な価値を持った商品づくりを進めている。新浴槽はデザイナーが提案するフォルムと性能の両面を浴槽の形に落とし込み、3次元プリンターで試作を繰り返してきた。

研究員が実際に使用し、生体データをとる

 開発着手時には、入浴の際にリラックスできる姿勢について、まとまった研究成果がなかった。モーションキャプチャーの赤外線が水中を透過しないため、人間の生体反応と合わせて観察することができなかったからだ。研究所では独自システム『アクティブマーカー』により、人体に取り付けたマーカーを複数台のカメラで撮影、画像処理することで、水中の姿勢を3次元的に捉えることに成功した。「最もリラックスできる形を追求してみると、宇宙飛行士が無重力状態で遊泳している姿勢にたどり着いた」と、加藤智久健康技術研究グループ主任研究員は話す。予想外の結果だった。このほか「浴槽内でいかに心身の疲れを取るか」をテーマに、最先端の研究者とも協力している。
 東北大学の川島隆太教授との共同研究では、ソファで休んでも人は考えごとが止まらないが、浴槽に浸かると心身ともに休まることがわかったという。こうした研究で、複数の学会賞も受賞した。
 欧州の見本市「ISH」では来場者からの評判も良く「水回りにテクノロジーを持ち込んだ点が評価された」と新原所長は話す。欧米やアジア圏での展開に向け、準備を進めている。

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