テーマは「ここにあるたからもの」に設定し、中心市街地の活性化を推進するため、既存ストックを有効活用し、対象地を含む周辺エリアを巻き込んだ新たな価値の創造と地域活性化を図る土地利用の自由な提案を求めた。
全国を対象に公募したコンペには、一般32作品と学生28作品の応募があった。審査は、書類審査で委員長を務めるUID一級建築士事務所代表の前田圭介氏を始め、物件オーナーの吉岡秀祐志ら梅ビル社長や鈴木支部長が公開審査選出者として一般部8作品、学生部7作品を選定。公開審査では、応募者のプレゼンテーションとヒアリングを経て、審査員の加点で受賞作品を選出し、その中から審査員が公開ディスカッションを行いながら最優秀賞を決めた。
一般部の最優秀に選ばれた「杜の石蔵びらき」は、歴史的建造物の石蔵をコーヒースタンドとして利活用し、駐車場を部分的に残しつつ、パン屋やお酒スタンドなどのテナントの段階的整備を提案。これにより、飲み歩きやまち歩きの立ち寄りスポットとして地域の認知度を高めつつ、オーナーの事業の持続性を確保することができるとした。このほか、既存の石蔵を構成する「秋保石」をコーヒースタンドのカウンターや石畳に使用することなどが、「景観をつなげる提案だ」と高評価となった。
学生部の「殻から芽吹く」は、仙台市内に小規模ギャラリーや画材屋が点在しているため、これらのものづくり・アートをつなぐ中核拠点として、一般市民やアーティストが自由に楽しめる創作空間を提示した。石蔵の保管庫としての機能を生かすために暗室などとして活用するほか、敷地内にギャラリーショップや展示場、作業場などを設けるとした。審査員は「次世代を担う若者を呼び込む提案だった」と評価した。
審査後、あいさつに立った鈴木支部長は「素晴らしい提案を見させてもらった。ここが始まりであり、今回の提案をオーナーと吟味した上で、実現に向けて当支部で支援していきたい」と語った。
吉岡社長は「5年後を見据え、方向性を明確にしていきたい。社会変化の先が見えない中、社会に生まれる価値を最大にする事業にしていきたい」と述べた。