【JIA東北】"地域の建築家のエネルギーを感じる" 建築家フォーラム「復興からまちづくりへ」 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【JIA東北】“地域の建築家のエネルギーを感じる” 建築家フォーラム「復興からまちづくりへ」

コンペ受賞者ら

 日本建築家協会東北支部(JIA東北、鈴木弘二支部長)は、仙台市内のパレスへいあんでJIA東北建築家フォーラム2017「復興からまちづくりへ」を開いた=写真。第10回記念東北住宅大賞と第1回空き地・空き家コンペの両表彰式や審査員による講演が行われたほか、パネルディスカッションで同コンペの今後の展開などについて意見を交わした。
 席上、あいさつに立った鈴木支部長は「これまで東北の建築家に多くの刺激を与えてくれた東北住宅大賞の表彰式と講演のほか、空き地・空き家コンペ関連では、表彰や基調講演、パネルディスカッションを行う。最後まで聞いていってほしい」と語った。
 来賓として本部から駆け付けた六鹿正治会長は「住宅大賞がしっかりと地域に根付き、定期的に行われていることから地域の建築家のエネルギーを感じる。開催のたびに時代を反映した作品が選ばれたと思う」と述べた。
 その上で、建築家を取り巻く環境の変化を紹介しつつ、▽経済・社会の変化と変動▽地域の変化▽設計技術の変化▽多様な発注方式▽認証・審査の多岐化▽発注者責任の明確化▽報酬規定の見直し▽団体としての力--といった課題に取り組む姿勢を示した。
 この後、東北住宅大賞の表彰式が行われ、第1回から審査委員長を務めてきた古谷誠章早大教授から、『地平の家』で2度目の大賞を受賞した蟻塚学氏(蟻塚学建築設計事務所代表)に表彰状が手渡された。
 今回で最後の審査となった古谷氏は「東北は太平洋と日本海があり、山もある。大局的に違ったアイデンティティーを持ちながら、交流を深め、仲間意識を持って、良い点を設計にまとめている。非常に楽しく、良い経験となった」と振り返った。
 同じく審査員の五十嵐太郎東北大大学院教授は「年々レベルが上がっていると感じていた。9、10回目はともに2回目の大賞受賞となり、さらにステージが上がった作品をみせていただいた。新しい東北らしさを開拓する場となった」と語った。
 空き地・空き家コンペ表彰式では、審査委員長の前田圭介UID一級建築士事務所代表が、一般部の最優秀作品『杜の石蔵びらき』を制作した丸山傑氏(フリーランス)と井上瑶子氏(同)、学生部は『殻から芽吹く』の東北大大学院の佐々木遼さんと吉田宗一郎さん、宮崎将行さんを始めとする各賞の受賞者をそれぞれ表彰した。
 また、今回のコンペを題材に、住宅大賞の審査員の古谷氏と五十嵐氏、同大賞受賞者の蟻塚氏、コンペ審査員長の前田氏、鈴木支部長をパネリスト、安達和之副支部長がコーディネーターを務めるパネルディスカッションを行った。
 この中で、鈴木支部長は「復興が進んでまちが出来上がる一方で、被災地でないまちは衰退を続けている。まちを活性化させるため、多くの建築家や若い人のアイデアを出し合うことが大事だと考えた」とコンペ開催の経緯を説明した。
 前田氏は今回のコンペの審査を踏まえ「コンペ形式は界隈性も含め、地域性を引き出し、ひも解く意義があった」と語った。
 古谷氏は「学生が思い描く自由な発想と、一般の実現性などが加味されたアイデアを同じ土俵にしても良い。世代や職種を超える場としてほしい」と強調した。
 五十嵐氏は「コンペは、注目されるきっかけになり、場所が持つ可能性を想像させる1つの出発点になる」と持論を述べた。
 蟻塚氏は「現代の課題を捉えたコンペだ。今回だけでなく、ぜひ根付いてほしい」と今後の展開に期待を寄せた。
 これを受けて鈴木支部長は「今回は仙台で開催したが、今後も継続し、別な地域でも開催していきたい」と応じた。

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