【BIM/CIM改革者たち】やってみようの雰囲気づくり 昭和土木設計 佐々木 高志氏、藤原 聖子氏 | 建設通信新聞Digital

5月8日 水曜日

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【BIM/CIM改革者たち】やってみようの雰囲気づくり 昭和土木設計 佐々木 高志氏、藤原 聖子氏

 「やってみようと思わせる雰囲気づくりが何よりも大切」と共感し合うのは、昭和土木設計(岩手県矢巾町)のICT推進室を統括する佐々木高志室長と藤原聖子リーダーの2人。同社を国土交通省の2019年度i-Construction大賞に導いた原動力にもなった。ともに製造業で培った高度な3次元CADスキルを生かして、二人三脚で社内の3次元化を先導している。地域の建設コンサルタントではBIM/CIMの原則化を前に対応に苦慮する姿がある。2人は「異業種の人たちに来てもらうのも選択肢の1つだろう」と考えている。

昭和土木設計 ICT推進室の佐々木 高志室長、藤原 聖子リーダー


 同社が社内にCIMワーキンググループを発足したのは13年のことだ。国がかじを切ったCIM試行を見据え、15年にICT推進室を組織化した。同業他社への3次元設計支援も進めており、現在は累計で40件を超えるBIM/CIM実績を数える。岩手県初のBIM/CIM指定業務も受託し、地域を先導する役割も担っている。

 佐々木氏は14年、藤原氏は15年に入社した。人工衛星や電化製品の設計を経験していた佐々木氏は「暮らしを支える建設業のものづくりに自分のスキルを生かしたい」、精密機械分野で金型の設計を手掛けてきた藤原氏は「エンジニアとしてのキャリアを高めたい」と考え、それぞれ転職を決めた。

 当初は不安もあったが、入社早々にドローン測量を目の当たりにして「驚きとともに3次元設計との組み合わせによってさまざまなチャレンジができる」と感じた佐々木氏は、初めて手掛けた橋梁の3次元設計成果でオートデスク主催コンペのCIM部門グランプリを獲得した。「特別なことを意識したつもりはなく、経験を生かし、自分が何をできるかを常に考えている」。他の橋梁設計では統合モデルを作成し、景観に配慮した塗装色検討や検査路部分の細かな干渉チェックにも活用した。

 前職で機械系3次元CAD『Creo(クリオ)』を愛用していた2人は、入社後にオートデスクのBIM/CIMソフト『Civil 3D』を使い始めた。これまではミクロン単位で設計を進めてきたが、建設業ではミリ単位の目線に変わった。図面のすべてに寸法が入るなど設計表現の違いもあった。3次元モデルデータの作り方としては地理的情報を常に位置付ける対応も初めての経験だった。藤原氏は「設計思想の部分で若干の違いはあったが、慣れてしまえば違和感なく操作することができた」と振り返る。

BIM/CIM実績は累計40件超


◆人材のボーダレス化進む
 ICT推進室は現在7人体制。実は他のメンバーもすべて異業種の出身者で構成し、全国的にも例がない先駆的な試み。メンバーの出身はメディア、ソフト開発、解析など多岐にわたる。その根底には既成概念にとらわれず、3次元に違和感を持たない人材を幅広く採用してきたいという村上功社長の一貫した思いがある。

 BIM/CIM原則化が目前に迫り、インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)化も進展しつつある中で、地域の建設コンサルタントや建設会社では3次元設計スキルを持つ人材の確保が大きな課題になっている。佐々木氏は「デジタル化へと移行しつつある建設業の実態をもっと社会に発信すれば、多くの優秀な人材が来てくれるだろう」、藤原氏は「建設業のデジタル化が広がるにつれ、人材のボーダレス化も進展していく」と強調する。

 約50人体制の同社は、平均年齢が49歳と高齢化している。社内ではICT推進室が3次元活用の魅力を伝えようと日々奮闘している。佐々木氏は「3次元がどれくらい便利であるかを浸透させたい」、藤原氏は「プレッシャーをかけず、変化する楽しさを共有していきたい」と考えている。

 社内では「3次元をやってみたい」との相談がICT推進室に寄せられるようになった。同社は異業種からの技術者がきっかけとなり、組織全体を新たなステージに押し上げようとしている。

道路設計業務での簡単CIM


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