【街並みの美学継承へ】芦原建築設計研究所の新たなスタート 所長・芦原太郎氏に聞く | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【街並みの美学継承へ】芦原建築設計研究所の新たなスタート 所長・芦原太郎氏に聞く

 戦後の日本に優れたモダニズム建築を数多く世に送り出した建築家・芦原義信。その設計活動の拠点であった芦原建築設計研究所が、芦原太郎建築事務所に建築設計業務の事業譲渡を行い、文字どおり「研究所」として新たなスタートを切った。「所内では父義信を指す“永久欠番”だった」という『所長』として、芦原太郎氏は「その建築や都市に向けた思いを次世代へ継承することを目指す」と語る。
 芦原建築設計研究所は1956年に設立、300を超える建築を設計してきた。その膨大な建築資料は長年にわたって整理された形で保管、部分的にウェブ上でも公開してきたが、2013年に20万点におよぶ資料を武蔵野美術大学に寄贈した。これをもとに「芦原義信建築アーカイブ」が実現したことも、「研究所として建築設計業務に区切りをつける」大きな契機となった。3月末に1級建築士事務所登録を廃止、設計した建築の維持、メンテナンスなどの相談などは芦原太郎建築事務所が対応していく。
 研究所として今後、注力していくのが「『街並みの美学』研究の継承と展開」であり、これまでも取り組んでいた「『街並みの美学トラベルスカラシップ』などによる次世代育成や、『エー・アーキテクツ・ネットワーク』の維持と活動支援」となる。
 特に『外部空間の設計』『街並みの美学』『隠れた秩序』の著作3部作が中国で再評価され、順次復刻版が出版されることに、「大都市にアイコニックな建築をつくることから、ようやく中国でもまちづくりの議論に建築家の関心が向き始めた」と目を細める。
 これらの著作は「建築を設計する自分の目と耳で感じ、気づき、考えたことをつなぎ合わせていったもの」であり、「フィジカルな外部空間の分析から始まり、それを街並みのスケールに発展させて研究するとともに実作品に実践し、次第に都市を支える目に見えない隠れた秩序を探しだそうという方向に向かっていく、1人の建築家の思想の進化と展開が、国内外を問わず建築を学ぶ若い人にとっていい教科書になっているのではないか」と、そのさらなる発信に尽力する構えだ。
 27日には武蔵野美術大学で開催中の「芦原義信建築アーカイブ展-モダニズムにかけた夢」にあわせ、「アーカイブの意義 父が残そうとしたもの」をテーマに講演する。開演は午後4時。

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