【BIM/CIM未来図】ウエスコ㊤ 業務効果を実感できる組織へ/3次元技術委員会が先導役 | 建設通信新聞Digital

5月16日 木曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図】ウエスコ㊤ 業務効果を実感できる組織へ/3次元技術委員会が先導役

 国土交通省のBIM/CIM原則化を背景に、建設コンサルタント各社が3次元対応力の強化にかじを切り始めた。従来進めてきた業務の在り方を見直すだけでなく、組織としても新たな方向性を模索する動きに発展している。西日本を中心に活動するウエスコ(岡山市)もその1つだ。岩元浩二執行役員技術推進本部長は「着実に人材を育てていくことが近道」と焦点を絞り込む。動き出した建設コンサルタント分野のいまを追った。

中国i-Con表彰を受賞した福山道路外設計業務


 ウエスコでは月1回のペースでBIM/CIM関連の具体的な課題をテーマに設定する社内勉強会がスタートした。ウェブでつなぎリアルタイムに各事業所にも配信している。河川部門を対象とした2021年12月開催の第8回勉強会では、導入する3次元設計ツール『Civil 3D』を提供するオートデスクを講師に招き、国内外の最新動向を情報共有し、活発に意見を交換した。

 勉強会を企画・運営するのは、2年前に発足した3次元技術委員会だ。委員自らが講師役となり、業務の中から抽出した課題をテーマに設定するなど、BIM/CIMノウハウの共有を進めている。中心メンバーの冨田修一技術部設計課課長は「社内にBIM/CIMへの興味を根付かしたい」との思いを強く持っている。

 08年に3次元計測、09年に3次元設計の導入にかじを切った同社は13年にCIMワーキンググループを立ち上げ、3次元対応力の強化を推し進めてきた。業務実績は着実に積み上がり、地元建設会社の荒木組と連携し支援した岡山県内初のICT工事では中国地方整備局長賞を受賞、20年には中国地方整備局の中国i-Construction表彰を福山河川国道事務所発注の福山道路外設計業務で受賞するなど対外的な評価も得ている。しかしながら社内の3次元に対する意識は「負荷的」と受け入れられる状況から脱せずにいる。冨田氏は3次元への抵抗感を取り除き、成功体験を増やしながら「BIM/CIMの業務効果を実感できる組織にしたい」と力を込める。

 原則適用が1年後に迫り、社内では総合評価の提案にもBIM/CIMの視点を積極的に盛り込んでいる。委員会は各部門から選抜した技術者約20人で構成しており、提案づくりや業務受託後の3次元活用の方向性など幅広く下支えしている。山本正司執行役員は「人材育成から業務支援まで委員会が機能し、先導役として社内を引っ張っている」と強調する。

 21年8月に受託した中国地方整備局鳥取河川国道事務所発注のバイパス新設詳細設計業務も、委員会が提案づくりを後押しした。福山道路外設計業務で取り組んだ地形モデルの成果を発展させ、受注に結び付けた。業務スタート前の発注者とのヒアリングを経て示した3次元地形計測の方向性も委員会が最適な枠組みを導き出した。

 計測部門と設計部門を持つ同社が重要視しているのは、両部門の連携強化だ。冨田氏は「業務案件に応じ、最適な計測技術手法とモデル作成方法を提案することが他社との差別化につながる」と考えており、「3次元を軸に組織の在り方も変化しようとしている」と手応えを口にする。

オートデスクと意見交換した第8回勉強会



【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから

建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら