【BIM/CIM未来図DX】日本工営(上) | 建設通信新聞Digital

5月5日 日曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図DX】日本工営(上)

実務者自ら業務のアイデアを形にする/活用定着し新たなステージに

 国土交通省のBIM/CIM原則化を機に、建設コンサルタントが3次元設計への転換を図り、BIM/CIM活用の新たなステージに踏み込む動きが現れ始めた。BIM/CIMのトップランナーとして業界を先導する日本工営は自動設計システムを開発し、業務の効率化や高度化を実現しようとかじを切った。一歩先をいく同社のBIM/CIM活用はどこに向かおうとしているか。

 同社では中央研究所内に組織されたCIM推進センターを軸にBIM/CIMの定着を図っている。組織は現在20人体制となり、各部門への業務支援や教育に加え、業務改革を実現するためのシステム開発にも取り組む。小野寺勝執行役員中央研究所長は「BIM/CIMに積極的な実務者をCIM推進センターの配属とし、業務上のアイデアを形にしてもらい、また現業部門に戻す流れをつくり、BIM/CIMを水平展開している」と明かす。

 これまでは河川、ダム、道路、橋梁、防災、砂防の分野で先行してきたBIM/CIM活用だったが、現在は「全分野で取り組む状況となり、着実にステージを一つ上げた」と手応えをつかんでいる。BIM/CIM活用の業務件数も年200件を超えるまでに拡大した。BIM/CIMの主力ツールとして位置付けるオートデスク製品の利用状況(日単位の従量課金プラン)を見ても、近年は年1.3~1.4倍の伸びを示しており、社内にBIM/CIMツールが定着してきた。

新入社員が作成した地すべり対策のBIM/CIMモデル


 背景には、国交省のBIM/CIM原則化に加え、他省庁や地方自治体でも活用業務が広がり始めたほか、受注業務の中で担当者がBIM/CIMを自主的に活用する流れが広がっていることも後押ししている。CIM推進センターの坂森計則センター長は「これからは概略・予備設計や調査・計画業務でも広くBIM/CIMの導入、活用が進む。今後は業務プロセスの再構築も必要になってくる」と考えている。

地すべり対策工の自動設計


 同社は、新たな業務プロセスへの転換を進める中で、モデル作成に軸足を置くのではなく、モデルの中に設計条件や設計思想を取り込む3次元設計プロセスの構築を追求している。小野寺氏は「BIM/CIMでは当然、業務の効率化を目指すが、さまざまな情報をモデルの中に入れることで、関係者間のコミュニケーションツールとしても成長していく。業務の付加価値を生む手段としてBIM/CIMを位置付けている」と力を込める。

 CIM推進センターが業務改革につながるシステムとして、パラメトリックモデリングや3次元モデルによる設計照査、解析、数量算出などの開発を重視しているのも「付加価値のあるシステムを積極的に創出していく」方針が根底にある。社内では実務者がシステム開発を担い、その成果を開発者自らが現業部門に戻って推進する流れが定着しつつあり、これまでに5人が推進役として活動している。

 坂森氏は「開発することが目的でなく、その成果を着実に社内に展開していくことが、何よりも重要」と強調する。だからこそシステム開発では、業務の効率化・高度化や品質の向上効果に加え、「誰もが手軽に使えるようなシステムとして仕上げる」ことに力点を置いている。

 地すべり・斜面防災分野では、2022年9月に自動設計システムの開発が完了した。これまでは対策工と地形のモデルを統合する必要があり、手作業でモデル作成を進めた場合、時間と労力がかかっていた。そこで構造物のモデル化作成の流れをプログラム化し、寸法情報や部材情報などの設計条件を入れるだけで、パラメトリックモデリングによって自動でモデル作成を進めるシステムに仕上げた。22年度には地すべり対策関連の10業務に活用した。23年度には2倍増の導入を見込む。小野寺氏は「これは付加価値システムの象徴的な成果の一つ」と強調する。

定着してきたBIM/CIMツール



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