【BIM/CIM未来図DX】日本工営(中) | 建設通信新聞Digital

4月27日 土曜日

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【BIM/CIM未来図DX】日本工営(中)

3次元設計基盤に新たなチャレンジ/自動設計は付加価値システム

 日本工営がBIM/CIM活用の有効な手段として、自動設計の取り組みに力を注いでいる。中央研究所CIM推進センターでは、業務の効率化や省力化に向けたシステムの開発をミッションの一つに掲げ、その重点テーマに「自動設計」を位置付けている。小野寺勝執行役員中央研究所長は「3次元設計に切り替える中で、仕事の進め方も変わってくる。より効率的で質の高い設計を進める手段として、自動設計システムの開発に乗り出している」と説明する。

 先行する地すべり・斜面防災分野では、2022年9月にプロトタイプが完成しており、業務への導入件数も着実に増加している。システム開発に携わったCIM推進センターの山口裕二技師は「国土保全分野とBIM/CIMの親和性は高く、自動設計の効果を存分に発揮できている」と手応えを口にする。

 山口氏はオートデスクのビジュアルプログラミングツール『Dynamo』を使い、構造物のモデル化工程をプログラム化し、寸法や部材の情報などの条件を入れることでパラメトリックモデリングによって自動作成するシステムを開発した。「プログラム初心者の私でも思うような枠組みを構築することができた」と振り返る。

 地すべり対策では防止施設の多くが地下にある。設計では地すべり発生機構や、防止工法の検討をすべり面や地下分布などの構造を踏まえて進める必要があり、BIM/CIMの可視化によって干渉のチェックなどもしやすくなる。現在は参考資料扱いとなったが、21年3月に国土交通省が示した3次元モデル成果物作成要領(案)に集水井工などのサンプルモデルが紹介されたことで、パラメトリックモデリングに必要な寸法や部材情報などが統一され、プログラムの要件定義が容易になったこともシステム開発を後押しした。

 システムは入力値を調整し、設計条件や設計思想の情報を追加するだけでモデルを自動作成する。地形や地質モデルに合わせた対策工の3次元モデル作成も可能だ。自動化により、作業の効率化や高度化に加え、品質や信頼性も向上する。経験が浅く対策工の完成イメージを想像しづらい若手技術者の設計支援にも活用できる。

自動設計システムの概要


 小野寺氏は「3次元設計データから自動化している点でヒューマンエラーも防げる。設計の入力条件を増やせば、さらに付加価値のある3次元モデルを提供できる」と強調する。CIM推進センターの坂森計則センター長も「3次元設計に乗り出したことで、そのデータを活用してさまざまなチャレンジができる流れになり、自動設計だけでなく、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の切り口も積極的に展開する」と先を見据えている。

 このように同社では、3次元設計への転換を機に、新たなシステム開発に乗り出す流れが広がり始めた。オートデスクの技術営業として主に建設コンサルタントを担当している植田祐司氏は「Dynamoを活用し、効率化を目指したシステム開発を進める動きは同業他社でも見られるようになったが、日本工営のように3次元設計がきちんと社内に定着していなければ、良質なシステム開発に結びつかない」と分析する。日本工営では河川、ダム、砂防、道路、橋梁の分野でも自動設計の取り組みが進行中だ。坂森氏は「実務者自らがシステム開発を担う流れを整えたことで、より最前線の目線から業務課題と向き合うことができるようになった」と手応えを口にする。

 レーザー光で離れた場所にある物体の形状や距離を測定するリモートセンシング技術「LiDAR」を使った現地調査ツールも導入が進む取り組みの一つだ。ツールの社内普及を手掛けたCIM推進センターの奥平賢太氏は「事務所でも情報が共有でき、災害復旧時にも迅速な現況把握と計画立案が可能」と説明する。22年度で57件の業務に活用した。仙台支店の防災担当約20人が活用を始めたように、社内では現況変調を把握する応急復旧の有効なツールとして期待されている。

現地調査ツール(点群編)



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