【BIM/CIM未来図DX】日本工営(下) | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図DX】日本工営(下)

実践しながらスキルを磨く/重要なコミュニケーションツールに

 日本工営は、国土交通省の動きを見ながら、社内のBIM/CIM教育を拡充してきた。2022年9月からは原則化を踏まえ、社内資格制度の運用も始めた。日本工営グループを統括するID&Eホールディングスの新屋浩明社長も「もう一歩先のことを考え、行動を始めよう」と、動き出したBIM/CIM資格の進展に期待を寄せている。

 資格は3段階に設定した。2時間の動画学習を位置付けた初級は、既に1500人の技術者が受講済み。今年から動き出した中級は実務で使いこなせるスキルを養うことを目的にBIM/CIMソフト操作研修を含む40~80時間のプログラムを設けた。現時点で100人が受講している。BIM/CIMマネジャーの育成を目的とした上級資格の準備も進めており、同社はBIM/CIMへの対応力を技術者の重要な素養の一つに位置付けている。

 日頃の業務では、オートデスクの汎用CAD『AutoCAD』やBIM/CIM設計ソフト『Civil 3D』、コンセプトデザインソフト『InfraWorks』、BIMソフト『Revit』などを活用している。海外でもオートデスク製品を使っており、国内外共通のツールとして位置付けている。16年からスタートした社内のBIM/CIM研修もオートデスク製品を軸に教育プログラムを作成した。

 CIM推進センターに所属する入社3年目の奥平賢太氏は、今年から研修の講師役を務めている。2週間の基礎研修に加え、研修の応用編では各部門の設計者とともに講師役となり、受講者に高度なBIM/CIM活用についても伝授している。奥平氏は「私が学生時代に点群データを研究してきたように、デジタルツールに触れてきた新入社員は多く、BIM/CIMへの適用能力はとても高い」と実感している。

オンラインでの社内教育風景

 CIM推進センターの山口裕二技師は「4年前に研修を受けた後すぐに国交省の斜面防災関連業務のBIM/CIM項目を担当することになり、悪戦苦闘しながらもBIM/CIMに取り組んだ。その時の経験がいまの基礎になっている」と振り返る。このように同社では、実践しながらBIM/CIMスキルを磨く流れが着実に浸透している。

 社内の変化を目の当たりにして、小野寺勝執行役員中央研究所長は「BIM/CIMはわれわれにとっての重要なコミュニケーションツールになるだろう」と考えている。2週間の新入社員研修をわずか1週間で終え、残りの期間を使ってオートデスクのビジュアルプログラミングツール『Dynamo』を学ぶ社員もいるように「若手(デジタルネイティブ世代)がこれからのBIM/CIMをけん引していく」と期待している。

 CIM推進センターの坂森計則センター長は、BIM/CIMを出発点に「DX(デジタルトランスフォーメーション)の領域に入っていく」ことを実感している。3次元設計にかじを切ったことで、自動化への筋道をつくり、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)といったデジタルツインとの結び付きについてもより強固にした。技術開発センターの佐藤隆洋センター長も「BIM/CIMデータを基盤に構築したデジタルツインを業務でどう有効活用していくかが重要な視点になってくる。これはDXの領域に他ならない」と確信している。

 CIM推進センターの発足から7年が経過した。同社のBIM/CIM活用の流れは急速に広がりを見せている。重要視する自動設計システムは、業務の効率化や高度化、品質向上につながるとともに関係者との情報共有手段としても有効だ。小野寺氏は「BIM/CIM活用の切り口は多岐にわたる。国がインフラDXの推進にかじを切ったように、われわれの付加価値づくりはこれからDXの領域にも踏み込んでいく」と、次への進展をしっかりと見据えている。

(左から)奥平氏、坂森氏、小野寺氏、山口氏、佐藤氏



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