【BIM/CIM未来図DX】ビッグ測量設計(2) | 建設通信新聞Digital

5月6日 月曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図DX】ビッグ測量設計(2)

鉄道ターミナルくまなく調査/点群データの有効活用に統合モデル化

 長年培った工事測量の経験と知識の蓄積から、現場のニーズに対して点群データや3次元モデルなどの計測・処理技術を柔軟に運用することが、ビッグ測量設計(東京都台東区)の強みだ。現況把握が欠かせないインフラ構造物の耐震補強や改修工事では、特に活躍の場が広がっている。

 大規模改修計画が進行する都内の鉄道ターミナル駅では、2年前から同社が3次元レーザー計測を使い、大掛かりな現況調査を進めている。空間情報事業部の清水康晴次長は「天井裏からホーム下まで点群データを取得している。広範囲かつ細かな部分までくまなく調査した当社でも最大規模の事例」と明かす。

 取得した点群データから設備や配管などの3次元モデル化を進め、管理者や種別属性ごとにレイヤー分けをすることで、駅改修計画時に活用しやすいデータを作成している。360度の撮影が可能な3Dスキャンカメラも導入し、ウェブ上で閲覧や共有が可能な3Dウオークスルーシステムを活用することで、配管などの細かな設備のモデル化やレイヤー分けの作業性向上を図った。同社は、現地と3次元モデルを専用ゴーグルやタブレット上で重ね合わせるMR(複合現実)を構築しており、現地にQRマーカーを測設し、現実空間と3次元モデルと位置を合わせ、事業関係者との現地協議などにも有効活用している。

 擁壁の壁面補強プロジェクトでは、補強材が適正に打設されているかを把握する境界越境のシミュレーションを行い、住民説明のツールとして効果を発揮している。隣接するマンションの基礎部分を避けるように擁壁の補強材を打つ必要があり、墨出しの作業を発展させ、擁壁の点群データと補強材の打設データを統合することで、その計画を見える化した。現場は鉄道設備に近接した石積み擁壁となり、補強材の打設位置や角度を現地に反映するためには、限られた時間内に3次元レーザースキャナーで現況を取得する経験やノウハウが必要だった。

 同事業部空間デザイン課の由井浩二課長は「われわれは取得した点群データをいかに有効活用するかを軸に置き、統合モデルとして提案している」と説明する。3次元モデルの作成やデータ統合には、オートデスクのBIM/CIMツールを全面導入している。特に点群と3次元モデルの統合作業ではコンセプトデザインソフト『InfraWorks』、地形図と連携して地盤モデルを作成する際にはBIM/CIM土木設計ソフト『Civil 3D』を日常ツールとして使う。施工ステップなどと組み合わせる際にはアニメーションソフト『3ds MAX』も活用している。

統合モデル化にオートデスクのBIM/CIMツールを全面導入


 20年ほど前から汎用(はんよう)CAD『AutoCAD』を愛用しており、現在はオートデスクのBIM/CIMツールをパッケージで利用できる『AEC COLLECTION』の契約を拡充している。これまで点群データと3次元モデルの作業は別々に取り組んでいたが、現在はオートデスク製品を軸にした統合データ作業が急速に増えている。

 その背景には、国土交通省のBIM/CIM原則化が少なからず影響している。建設コンサルタントや建設会社の業務支援を担う中で「工事測量段階における統合データ化の要求が着実に増えている。工事測量や設計支援の依頼に合わせ、われわれ自身が統合データ活用の逆提案を行うケースも増えてきた」と、同事業部の尾形元希部長は説明する。

 近年、同社は建設会社の受注提案づくりに参加するケースも多く、その範囲は計画・設計・施工・維持管理など多岐にわたる。建設会社にとって、最前線の現場担当者による点群データと3次元モデルの統合は対応が難しい。同社スタッフが現場事務所に常駐するなど、現場の下支え役として、存在感は増している。空間情報課の伊藤紀剛課長は、時間外労働の上限規制適用による“2024年問題”を背景に「3次元データ関連の業務を外注する流れも今後さらに拡大してくるだろう」と先を見据えている。

擁壁壁面補強の住民説明用アニメーション



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