【BIM/CIM未来図DX】ビッグ測量設計(1) | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図DX】ビッグ測量設計(1)

点群にモデル統合の流れ拡大/工事測量の付加価値として3次元計測

 国土交通省のBIM/CIM原則化を背景に、建設コンサルタントや建設会社の3次元データ活用が広がりを見せる中、工事測量分野にもBIM/CIM活用の流れが急速に広がり始めた。関東地区で鉄道や空港の関連工事を中心に活動するビッグ測量設計(東京都台東区)は、業界に先駆けて20数年前に導入した3次元レーザー計測技術を駆使し、工事測量や設計支援の有効な手段としてBIM/CIMを活用するトップランナーの一つだ。

 同社が空間情報事業部を新設したのは15年前のことだ。本業の工事測量に地上型レーザースキャナーの活用を着実に増やしてきたものの、技術者が個々に点群データや3次元モデルを使った業務を実施していた。そこでノウハウの蓄積や技術員育成のため、約10人を同事業部に集約した。当時は営業部門がなく、技術営業の部隊としても位置付けられた。

 当初は、石垣や文化財関連などの複雑な測量業務に地上型レーザースキャナーなどの3次元計測技術を使い、現状把握や復元計画に必要な図面や資料などを作成してきた。そうした経験を積みながら同社は本業の工事測量にも展開するようになった。空間情報事業部の尾形元希部長は「今では工事測量の付加価値として、点群データと3次元モデルを統合したBIM/CIM事業を積極展開している」と力を込める。

列車運行への支障確認(在来線運転手目線)

 現在の3次元レーザー計測は、360度の範囲を計測できるが、当時はまだ40度ほどと狭く、点群データの計測速度も遅かった。機器類も重く、計測作業では複数人で対応せざるを得ないため、トータルステーションを使った通常の測量と比べても作業時間や労力はそれほど大差なかった。

 同事業部空間デザイン課の由井浩二課長は「現在の作業時間は当時の5分の1ほどまで短縮し、大幅な業務効率化が実現している」と説明する。しかも点群データから必要な部分の現況断面を自由に切り出すことができ、構造物の3次元モデルとデータ統合すれば、施工段階や工事完成後のシミュレーションにも有効活用できる。まさに工事測量の付加価値として領域を広げている。

 同社は、ライカ社製で最大計測距離1㎞程度の高性能な地上型レーザースキャナー、130m程度の中型スキャナー、60m程度の小型スキャナーを保有し、計測場所や利用方法によって効果的に計測器を使い分けている。データ処理や3次元モデル化にはライカの点群処理ソフトに加え、オードデスクのBIM/CIMツールなどを活用している。

地上レーザスキャナの計測風景


 同事業部で手掛ける業務の9割は、既に地上型レーザースキャナーを使っている。尾形氏は「これからの工事測量では3次元計測が主流になり、それを3次元モデルとどのように組み合わせていくかが差別化のポイントになってくる」と語る。

 豊富な実績を持つ鉄道工事では、列車運転手の視通確認手段として、点群データと3次元モデルを統合した走行シミュレーションに取り組んでいる。新築構造物などが運転手の目線を阻害しないかチェックするため、これまでは夜間の作業時間帯に確認者が軌道上で脚立に昇るなどして、屋根や梁などの位置を一つひとつ確認する必要があった。

 走行シミュレーションの導入によって、関係者の全員が状況を把握でき、計画立案の円滑化にもつながる。きっかけは設計を担った建設コンサルタントからの相談を受け、具現化に至ったが、最近では点群座標データと3次元モデルを組み合わせた同社のソリューション展開を聞き付けた事業者から、技術的な相談を受けるケースも出てきた。

点群と3次元モデルを統合し、走行シミュレーションを行う



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