【BIM/CIM未来図DX】ビッグ測量設計(3) | 建設通信新聞Digital

5月15日 水曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図DX】ビッグ測量設計(3)

マニュアル動画で自主的教育/施工に使える点群データ提供が役割

 ビッグ測量設計(東京都台東区)の空間情報事業部は現在33人体制となる。15年前の発足時から3倍に人員を増やした。技術者の全員が3次元レーザースキャナーを自在に使いこなす。全社の平均年齢は35歳を超えるが、同事業部は平均30歳と、20代後半がボリュームゾーンを占め、社内でも若手が活躍する部署だ。

 2022年からは、社員がいつでも手軽に学習できるようにと、点群データ取り扱いのノウハウを集約した『マニュアル動画』を教育ツールとして活用し、その数は現在60を超える。同事業部空間情報課の伊藤紀剛課長は「業務の合間にも、手軽に学ぶことができるように3~10分の動画としてまとめている。外注せず全て自社で作成しており、それも教育の一環になっている」と説明する。尾形元希部長は「当社には自ら学び習得する文化が根付いている」と付け加える。

 視聴数が最も多いのは、点群データ解析の動画という。同社にとっては、それだけ不可欠なノウハウでもあるということだ。そもそも点群データは取得することだけが目的ではない。現況図、平面図、立面図などに起こして納品することになり、点群から2次元図面に展開する部分が技術者のベーススキルになる。近年は国土交通省のBIM/CIM原則化の流れで、建設会社や建設コンサルタントを支援するケースも多くなり、同社に求められる要求も高度化し、点群データと3次元モデルの統合化が増えている。

自ら学び習得する文化が根付く


 同事業部空間デザイン課の由井浩二課長は「重要なのは基準点をしっかりと定めた上で点群を取得していくことであり、きちんとした方法で計測されていなければ、使い物にならないデータになってしまう」と強調する。広範囲を計測する場合、まずはトータルステーションを使って複数の基準点を位置付け、そこに取得した点群データを重ねていく。建設会社などから外注した点群データのチェックを依頼されるケースもあるが、同社が再計測して納品するケースも少なくない。

 国のインフラDX(デジタルトランスフォーメーション)が進展する中で、企業側のDX対応が高まり、建設現場でのデジタル化の流れはより進展の兆しを見せ、それに呼応するように同社の存在も大きくなっている。「施工に使える点群データ提供が当社の役割」と尾形氏が力を込めるように、同社は工事測量の付加価値として、点群データと3次元モデルの統合提案を強化している。

 毎年、着実に新卒採用を続けている同社には、今年4月に10人の新卒者が入社し、この
うち2人が同事業部の配属となった。3次元レーザー計測の測量会社というイメージを持って入社する社員もおり、その技術を習得したくて門をたたくケースがほとんどだ。

社内教育用のマニュアル動画


 3次元レーザー計測は同社の日常ツールになっており、近年は点群データと3次元モデルデータの統合化業務も急増している。統合モデル作成時に使っているオートデスクのBIM/CIMツールをもっと効果的に使いたいという社内意識も広がっており、販売代理店の大塚商会を通して、積極的にサポートを受けるケースも増えているという。

 大塚商会とは保守契約「たよれーる」を結び、ツールの使い方から業務上の相談事までも電話サポートで疑問点を解決している。業務を進める上で、新たなツール導入の相談も大塚商会にお願いするケースも増えている。3次元モデルを現実空間に重ね合わせるAR(拡張現実)に取り組もうと導入した「mixpace(ミクスペース)」もその一つだ。ファイル変換などの工数を割かずにより効率的にAR活用ができ、改修工事現場での現地確認のツールとして有効活用している。このように同社は新たな技術を積極的に進めながら進化してきた。

現実空間に3次元モデルを重ね合わたARにも挑戦



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