【BIM/CIM未来図DX】中央復建コンサルタンツ(下) | 建設通信新聞Digital

5月1日 水曜日

B・C・I 未来図

【BIM/CIM未来図DX】中央復建コンサルタンツ(下)

ICTを賢く使い業務に付加価値/自由な発想で未来を描く

 中央復建コンサルタンツでは、先進的なBIM/CIMの活用が広がりつつある。それを下支えするICT戦略室は外注や高価な機器に頼った派手な枠組みではなく、手軽に効果を実感できるICT活用をテーマに業務改革を後押ししている。森博昭室長は「新しい道具を使うことが目的ではない。BIM/CIMデータをいかに賢く使うかが業務の付加価値につながっていく」と力を込める。

 プロジェクト関係者がBIM/CIMモデル上に話し合う「メタバース協議」ではゲームエンジンを活用して関係者が手軽に集えるようにした。毎月開催しているDXテクニカル・ミーティングを通じて社内に情報発信したところ、発注者との協議ツールとして使っていきたいと依頼が着実に増えている。

手軽に集えるメタバース協議


 2年前に開発した「MR遠隔臨場」や「MR設計協議」は既に手軽で分かりやすい業務ツールとして定着しつつあり、国土交通省の直轄業務でも導入事例が出てきた。3次元モデルを閲覧できるクラウド型3次元モデル閲覧システム「Panorama manager(パノラママネジャー)」も地元説明の場などで活用が進んでいる。

定着しているMR協議


 ICT戦略室の伊藤麻衣子氏は「BIM/CIMデータを効果的に使う視点でシステム開発を進めている。各部門から活用に向けたアイデアも多く寄せられるようになった」と明かす。阿比留麻織氏も「社内が国交省のBIM/CIM原則化を前向きに受け止め、データを有効に活用していきたいという意識へとつながっている」と語る。森室長は「BIM/CIMを賢く使おうとする流れが広がり、新たなステージに踏み出せた」と考えている。

 4月に発足した未来社会創造センターは、ICT戦略室のほか、公民連携まちづくり、PM・CM、技術マネジメント、メンテナンスイノベーション、オープンイノベーション、万博・スマートシティの計7室で構成している。センター長の坪村健二取締役は「各室それぞれが当社の未来の姿を描きながら活動を始めた」と説明する。

 発足時には、7室に所属するメンバー総勢50人に対し、自らの描く未来社会を考察してもらうとともに、各室長はそれぞれが取り組む未来社会の方向性を示した。隔週のペースで精力的に開いている全体会議は「われわれ建設コンサルタントとしての役割は何かを考える場になり、インフラ構造物の整備だけではなく、完成したインフラ構造物を効果的に使っていくサービス的な視点も含め、横断的な議論に発展している」と説明する。

 森室長は、ICT戦略の目線として「30年先の未来社会をイメージしている」という。国交省のBIM/CIM原則化をきっかけに3次元データ活用の流れが急速に動き出し、各フェーズにデータをつなぐ役割として「建設コンサルタントとしての職域は大きく広がる」と考えている。デジタル技術の進歩もあり、ICT戦略は時代とともに急速な広がりを見せるだけに「世の中の一歩先を見据えて動くことが求められる」と、次代をしっかりと見据えている。

 同社は「インフラDX」と「SDGs」の二つを未来社会の重点分野に位置付けている。現行中期経営計画では「本質を極める」をテーマに設定し、真に求められる技術者集団として価値創造企業を目指す。坪村センター長は「社として未来社会のターゲットを定めたことで、さまざまな視点から自由な発想で未来の姿を考えられるようになった」と手応えを口にする。同社は、BIM/CIMを出発点にインフラDXの領域に力強い一歩を踏み出した。

(左から)伊藤氏、森氏、坪村氏、阿比留氏



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