【技術裏表】オートデスク BIM/CIM活用へ新たな切り口 | 建設通信新聞Digital

4月30日 火曜日

B・C・I 未来図

【技術裏表】オートデスク BIM/CIM活用へ新たな切り口

土工区分対応の数量算出を自動化

 オートデスクが、BIM/CIMの3次元モデルデータから土工区分に対応した数量算出の自動化技術を開発した。現在は20m間隔で2次元断面図を作成し、その平均値から数量を算出している。しかも掘削幅に応じて積算の区分が異なり、その境界を断面図に反映する必要がある。設計者や施工者にとって自動算出が可能になれば、大幅な業務の省力化が実現する。BIM/CIM原則化にかじを切った国土交通省が積算業務の効率化に向けた議論を加速する中で、新たな切り口として注目されそうだ。

 土工数量の把握は、掘削幅が5m以上をオープンカット区分、5m未満を片切掘削区分として規定されている。数量は区分を反映した断面図を20m間隔で作成し、その平均値から導く平均断面法によって算出する。この規定に沿って設計者は現況と計画断面から土工数量の計算書を作成、施工者は設計照査として起工測量を踏まえて施工数量をはじき出している。

 市販の土木設計ツールでは、3次元モデルから掘削の全体数量を把握できるものの、掘削幅に合わせた土工区分まで対応していないため、設計者や施工者は2次元の断面図を作成し、手計算で平均断面法を使って数量を算出しているのが現状だ。BIM/CIM原則適用を踏まえ、建設系ソフトベンダー28社が加盟するOCF(旧オープンCADフォーマット評議会)と国交省の意見交換などでも、BIM/CIMを活用した数量算出が重点テーマの一つとして話題に上がっていた。

土工区分を考慮した3D掘削面を自動作成

積算境界の計算不要高精度な算出が実現

 オートデスクは、以前から土工区分に対応した数量の自動算出が理論上、実現可能と考えており、BIM/CIM原則化を見据えて研究開発を進めてきた。技術営業本部の日下部達哉氏は「土工区分を考慮したBIM/CIMモデルの自動作成が実現することで、これまで各断面で積算区分の境界を計算していた作業は一切不要になる」と強調する。

 同社の土木設計ツール『Civil 3D』は平面線形、縦断線形、標準断面を組み合わせ、掘削面の3次元モデルを作成する。機能強化によって現況地盤面の測点位置を設定し、そこから掘削幅5mの位置を自動で算出できるようにする予定だ。現況面と掘削面(片切部分)のサーフェイスモデルを重ね合わせ、その差分を取ることで、瞬時に土量を計算することが可能になったという。同本部の井上修氏は「標準断面を構成する小段と断面の位置情報に加え、掘削幅5mの位置情報を追加することで、土工区分の反映が実現した」と説明する。

測点間隔も自由に設定可能


 横断図作成の現行基準では20m間隔の算出が基準になっているが、Civil 3Dでは間隔位置も自由に設定できるようになることから、間隔を短く設定することでより精度の高い数量算出が実現する。例えば測点間隔を1mにすればICT施工にも活用できるという。モデル形状はパラメーターによって制御されているため、施工者にとっては瞬時に設計変更への対応も可能だ。3次元モデルベースとなるため、指定された測点から土工区分を含めた2次元横断図を簡単に出力でき、関係者の協議にも迅速に対応する。

 同社は、BIM/CIM原則適用が2023年度からスタートし、3次元設計の流れが拡大するにつれ、ユーザーから土工区分への対応を求める要望が高まっていることから、技術開発を急いできた。日下部氏は「2次元横断図の作成や平均断面法での数量計算をせず、全て3次元ベースで土工区分に対応した数量算出が可能になることは、土工におけるBIM/CIM活用の大きなインパクトになる」と強調する。同社はCivil 3Dへの実装を踏まえ、自社のホームページで数量算出の自動化機能の方向性をまとめた解説動画の公開も始めた。

Civil 3Dを機能強化



【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら