【BIM/CIM2022①】"成功体験の共有へ" 廣瀬昌由国土交通省技術審議官に聞く | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIM/CIM2022①】”成功体験の共有へ” 廣瀬昌由国土交通省技術審議官に聞く

【3Dを核に業務革新詳細設計へ原則適用】
 国土交通省は2023年度のBIM/CIM原則適用に向け、22年度からすべての構造物の詳細設計でBIM/CIMの原則適用を始める。発注者と受注者、ソフトウェアベンダーとユーザーがBIM/CIMの推進に向けて連携し、プロジェクトの各段階で生成される3次元データの活用を生産性向上の起爆剤とすることで、国交省が取り組む「インフラ分野のDX」の強力なエンジンになることが期待される。3次元モデルをコアにしたさらなる技術開発や働き方改革の進展など、BIM/CIM原則適用がもたらす建設生産システムの未来を展望する。

廣瀬昌由国土交通省技術審議官

――これまでのBIM/CIMの取り組みと成果は

 「国土交通省は、2割の生産性向上を目指して2016年からi-Constructionを進めてきた。 一方のBIM/CIMは、i-Constructionに先行して12年度から開始し、20年度末までに業務が934件、工事が572件、 合計1506件に適用している」

 「今後、ICT施工や工事の全体最適化、平準化などを中心に行政サービスや受発注者の働き方改革に向けたインフラ分野のDXに挑戦するなかで、BIM/CIMは強力なエンジンになる。そのため、23年度までに小規模を除くすべての公共事業でBIM/CIMの原則適用を目指す」

――22年度の取り組みのポイントは

 「23年度に向け段階的にBIM/CIMの適用範囲を広げていく。先行して取り組む大規模構造物は21年度に詳細設計を原則適用しており、22年度は工事にも原則適用する。大規模以外の構造物は22年度に詳細設計に原則適用し、23年度から詳細設計と施工で原則適用する」

 「23年度からすべてを3次元化するのは難しいため、最初はライトなところから3次元データの活用を始める。全体を少しずつベースアップしていき、将来的に要求レベルを上げることを想定している」

 「リクワイヤメントは、どの段階からどう3次元データを活用するかを業界団体と協議し、工種別に整理していく。国交省は22年度からDXセンターの運用を本格化し、受発注者の作業環境向上、3次元データの情報共有の円滑化に向けた取り組みを進める」

――原則化に向けた課題と対策は

 「まだBIM/CIMに馴染みのない人も多いため、国交省、建設コンサルタント、ゼネコンの能力の底上げが重要だ。国交省は21年11月からBIM/CIMポータルサイトの中で研修用のPDFや動画コンテンツの公開を開始した。22年度も充実させる」

 「業界団体も普及・啓蒙活動に力を入れているため、そうした活動にも積極的に参加してほしい。国交省も発注者のニーズに合ったリクワイヤメントの提案について十分に示せていないため、研修コンテンツで公開していく」

――今後の展開を教えてください

 「BIM/CIMを適用することで生産性向上と働き方改革をシステマチックに連動させ全体効率化を目指す。例えば担当者が変わっても構造物は残るため、それに関わるリスク情報などを紙でなくデータ化すればシステマチックに共有できる。目指すべき姿を示し、分かりやすい成果を出しながら、受発注者間、事業の川上から川下までデータをつなぐことに挑戦する」

 「それにはBIM/CIM技術者の資格制度も重要。BIM/CIMは単に3次元モデルをつくるだけでなく工学的判断が求められるため、資格として運用する際、どういうものがいいか議論をはじめたところだ。DX時代にふさわしい能力を議論していく」

 「BIM/CIMのユーザーが増えれば要望も増え、たくさんのソリューションが提供されるだろう。その中でみんなが成功体験を共有できる技術が生まれることを期待している。それが坂道を登る上で重要だからだ。建設業は一品生産だからこそ土木技術とDXを融合して相乗効果を出す必要がある。具体的な成果を上げながら正のスパイラルをつくりたい」



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