【BIM/CIM改革者たち】丸彦渡辺建設 属性付与は未来の現場のため/原則化に向けて段階的に順応 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【BIM/CIM改革者たち】丸彦渡辺建設 属性付与は未来の現場のため/原則化に向けて段階的に順応

井田 智樹氏

 「2年前からBIM/CIM原則化に向けて準備を始めている」と明かすのは、丸彦渡辺建設(札幌市)の札幌支店土木部土木工事課で現場のICT活用やBIM/CIM導入を支援するチームリーダーの井田智樹氏だ。同社は現場の自主目標として2021年度に3次元モデル活用を位置付け、22年度からは3次元モデルへの属性付与に取り組んでいる。「自分たちで実際に行い、しっかりと経験を積み、スムーズに原則化へと入っていきたい」と強調する。

 同社は6年前に現場のICT活用にかじを切った。国土交通省がi-Constructionを打ち出したタイミングでもあった。井田氏は当時の土木部長が将来を見据え、ICT施工の必要性について力説したことを鮮明に覚えている。その1カ月後に「まさか自分がその下支え役として任命されるとは思いもしなかった」と振り返る。

 北海学園大の土木工学科(現・社会環境工学科)を卒業し、1997年4月に入社した。現場を経験する中で関係書類を少しでも効率的に作成したいと自動化ツールを自作し、部署内で共有していた。「デジタル化に興味はあったが、現場のICT活用を支えることができるか、不安が先に立った」

 オートデスクの建設業向けBIMソリューション「AEC Collection」を導入し、販売代理を務めた大塚商会の担当者に疑問点について相談する日々が続いた。「当時は1人で全てをこなしていたこともあり、誰にも相談することができず、疲弊していた。今は仲間が増え、ノウハウを共有しながら一歩ずつ着実に前に進んでいる」

 4年前に2人の若手がチームの所属となり、現在は3人体制で現場のICT活用を支えている。社内では「SE(スペシャルエンジニア)」と呼ばれるようになり、現場との信頼関係も深まっている。「2人には私が全てを教えたわけではなく、それぞれが試行錯誤しながら現場をサポートしている」と、手応えを口にする。

SEチームは3人体制


 国土交通省のBIM/CIM原則化に呼応するように、これからは北海道や札幌市などの自治体発注工事でもBIM/CIM対応の流れが鮮明になってくる。札幌と苫小牧に支店を置く土木部門では先行して取り組む札幌支店に続き、苫小牧支店でも対応することを検討している。札幌支店では進行中の5現場のうち、舗装工事以外の4現場で自主的にBIM/CIM対応を推し進めている。

 同社は23年度からスタートする原則化に対して、段階的に順応しようと、21年度からはICT活用現場を対象に3次元モデルデータの作成を進め、モデルを発注者への説明ツールとして活用してきた。SEチームのワークステーションと現場のパソコンをつなぎ、遠隔操作で現場がモデルを操作できる仕掛けも取り入れた。

 22年度からは、BIM/CIMモデルに属性情報を付与する取り組みにも挑戦している。オートデスクの「Civil 3D」で作成した3次元モデルにエクセルで編集した属性情報を自動で付与するアドオンツール「ARK CIVIL」の導入を決め、現場への説明も開始した。「現場が整理した情報を、われわれがそこに格納していくが、現場にとっては書類や画像などの情報をきちんと分類して整える手間が発生する。現場の声を尊重しながら、最適な枠組みを作っていきたい」と前を向く。

現場では自主的にBIM/CIM対応を推進中


 しかし、BIM/CIMへの現場意識は「なかなか盛り上がらない」とも感じている。ICTの活用は生産効率や省人化、安全面など具体の導入効果が発揮できる。一方のBIM/CIMは3次元モデルによる可視化が発注者協議や地元説明の場で有効だが、求められている属性情報の付与については現場が明確なメリットを見いだせず、その対応を負担に感じてしまう傾向がある。

 井田氏は「BIM/CIMの恩恵とは何かを考えることが何よりも大切」と考えている。原則化が動き出せば、企画・調査、設計、施工、維持管理へとデータが一貫してつながる。「われわれ施工者が付与した属性情報は維持管理に引き継がれ、遠い未来には更新工事としてわれわれ施工者に帰ってくる。未来の現場のために情報を残す意識でBIM/CIMに取り組まなければいけない」と力を込める。



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