【BIM/CIM2022②】標準化の展望 新たな働き方へ実施項目、進め方整理 | 建設通信新聞Digital

4月29日 月曜日

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【BIM/CIM2022②】標準化の展望 新たな働き方へ実施項目、進め方整理

 国土交通省は、BIM/CIMの活用を推進する新たなロードマップを策定した。導入理由や受発注者の新たな働き方、実施項目などを明示し、2023年度の原則適用を踏まえた建設生産・管理システムの目指すべき将来像を提示している。ロードマップや原則適用のポイントについてBIM/CIM推進委員会委員長の矢吹信喜大阪大大学院教授に聞いた。

国土交通省BIM/CIM推進委員会委員長
大阪大学大学院工学研究科教授
矢吹 信喜氏


――新たなロードマップの特徴を教えてください

 「これまでのロードマップは、実施項目の進め方は示していたものの、それによって実現する働き方などは必ずしも明示していなかった。新たなロードマップは、意志決定の迅速化などBIM/CIMが実現する目標や効果、導入理由を明らかにし、新たな働き方に向けた実施項目や進め方を整理した」

 「発注者が設計、工事のデータ管理を適切に行い、プロジェクトの中でBIM/CIMを活用する観点を重視した取り組みを進めるため、『発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会』の議論を踏まえてデータマネジメントを強化していく」

 「具体的には共通プラットフォームに各プロジェクトのデータを体系的に保管し、関係者がいつでも容易にアクセスできる環境を整備する。リスク情報をプロセス間で伝達し、それを前提に設計・積算、入札・契約制度、施工、維持管理などのライフサイクル全体で3次元データを回していく」

――これまでの実施項目の取り組み状況は

 「23年度までに各プロセス間のデータ連携に向けた基準要領の制改定を完了させる予定だ。BIM/CIMを活用した新たな積算手法や監督・検査手法の検討は継続し、活用効果の高い契約方式の検討はこれまでのECI方式に加え、詳細設計付工事やデザインビルドなどの契約方式の実施について発注者懇談会で検討を進める」

 「BIM/CIMを活用した設計照査では、ソフトを用いた機械的処理の可能性を検討していく。シンガポールでは建築確認申請にBIMを活用し、図面の7-8割の照査を自動で行うプログラムを利用している。土木分野での可能性を探りたい」

 「BIM/CIM技術者の資格制度も継続的に検討する。私自身も『CIM塾』を主宰して技術者教育に関わってきた。より多くの関係者が研修を受けられるよう、教育体制や資格制度の確立を強力に推進していく」

――22年度の取り組みのポイントを教えてください

 「22年度は、大規模構造物のすべての詳細設計と工事にBIM/CIMを原則適用する。それ以外の構造物(小規模を除く)もすべての詳細設計に原則適用する。23年度にはすべての詳細設計、工事に原則適用する方針だ」

 「発注者の要求項目を示すリクワイヤメントは、発注者が必要と判断した場合に原則適用の上乗せ分として運用し、必要な3次元モデルを受注者が作成する。これまでのリクワイヤメントを分析し、どの段階からどう3次元モデルを活用するべきか業界団体と協議して工種別に整理する」

 「例えば業務のリクワイヤメントのうち、『可視化による設計選択肢の比較評価』では、地形が複雑で2次元図面では合理的な評価が難しい場合などにBIM/CIMの適用を求める。また、測量業務に適用する『既存地形及び地物の3次元データ作成』の項目を新設し、現況地形を点群データで作成することで後工程の詳細設計にデータを円滑に受け渡せるようにする」

――原則適用に向けてどのような準備が必要でしょうか

 「受注者は既にDXに取り組んでいると思うが、いままでの仕事をそのままデジタル化しただけでは部分最適化になり、BIM/CIMを始め、DXの効果は一部にとどまってしまう。大事なことは全体最適化の実現にある」

 「現状は資料をエクセルにインプットするだけだったり、同じ情報を人や組織に合わせて形を直して提出するだけの業務に多大な労力を費やしている。業務を分析し、どこに無駄があるのか把握することが重要だ。『己を知りうる者は賢者なり』という言葉もあるように、自己分析して最適な活用法を探ってほしい。BIM/CIMを導入し、従来のやり方を根本から見直す『プロセス・リエンジニアリング』を行うことで爆発的な生産性向上が実現する」

 「一方、国交省は設計と施工に原則適用するが、それによって生まれるモデルデータを維持管理にどう使うのかが課題として残る。10年かけて設計と施工の原則化にたどり着いたが、もう一歩頑張って維持管理にまで持って行くことが大切。そうしなければ画竜点睛を欠くことになりかねない」

 「維持管理で活用する手法として、例えば建築のCOBieが参考になる。3次元モデルから属性情報だけをEXCELに書き出して検索機能を使うことができ、英米では10年以上前から導入している。新たな手法にチャレンジする価値はある」

――BIM/CIMの10年後をどのように考えますか

 「IFC4・3は来年春にISO16739に認定される予定だ。土木ソフトの多くが新しいIFCに準拠し、データの入出力や属性情報の受け渡しがスムーズになる」

 「原則化によりユーザー数の爆発的な増加が予想される。メーカーの売り上げが増えればより機能開発に力を入れる。競争が激しくなり、よいソフトが安く提供され、ユーザーに好ましい環境になる」

 「日本語ワープロ専用機が80年代に使われ始めて、約10年後の90年代半ばにウィンドウズ95が登場し、パソコンを1人1台利用するのが当たり前になった。BIM/CIMも似た経路をたどり、10年後は建設業界で当たり前に使われることを期待したい」



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