【BIMでクレーンの動きをシミュレーション】コベルコ建機の『K-D2PLANNER』 | 建設通信新聞Digital

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【BIMでクレーンの動きをシミュレーション】コベルコ建機の『K-D2PLANNER』

 コベルコ建機は、クレーンの施工計画を検討するRevitのアドオンソフト『K-D2PLANNER』(ケーディーツー・プランナー)のプロトタイプを開発した。BIMモデル上で資材を吊り込むシミュレーション機能を搭載し、吊り荷を揚重する際に発生するクレーンの「たわみ」を表現するなど、建機メーカーならでは専門機能を充実させた。コストパフォーマンスの良いクレーンの機種を簡単に探せる「検索機能」を搭載するなどソフト開発に力を注ぎ、ユーザーの生産性向上を強力にサポートする。

◆建機メーカーならではの専門機能を搭載
 熟練オペレーター不足が深刻化する中、建機メーカーの立場から現場の生産性向上に貢献するため、ゼネコンが導入を進めるBIMのアドオンソフトを開発することにした。BIM上で現場のクレーン挙動を再現することで、適切な吊り能力のクレーンの選定や配置などの検討を効率化する。田中精一企画本部新事業推進部新事業企画グループ長は「現場で工期が延びると工事費が増えるほか、施工手順や搬出入の場所が変わり、安全管理の負担も大きくなる。また、新しい工法に取り組む現場も増え、経験の少ない工法の施工計画を作成する必要がある。このような施工計画や施工管理を支援することで、クレーンオペレーターや現場監督の負担低減にもつなげたい」と狙いを語る。

 ソフト開発は、ゼネコンの間でBIMの導入が進んだ2019年に着手した。「メーカーは建機の性能に詳しくても、実際の現場での使われ方を知らないことが多い。ゼネコンの声を拾いながら施工のノウハウや現場に必要な機能をまとめていった」と振り返る。
 2年をかけて開発したケーディーツー・プランナーは、同社として建設業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に貢献するアプローチの1つに位置付ける。「世界の現場ではデジタルツインの取り組みが進んでいる。BIMで作成した施工計画と実現場をデータ連携し、デジタルツインを構築することで、施工実績の見える化と施工の最適化に貢献する機能の開発をさらに進めたい」とし、今回を試金石にアプリ開発を加速する考えだ。

 ケーディーツー・プランナーはRRevitにアドオンし、施工者の持つBIMモデル上にクレーンを配置して、マウスクリックなどの直感的な操作でクレーンの姿勢や場所を自由に動かしながら、最適な施工手順や機種などを検討することができる。さらにクレーンで設置したい柱や梁などの資材をBIMモデル上でクリックすると、クレーンを資材の吊荷姿勢に合わせることができる。負荷率や接地圧など施工計画に必要な情報を自動で算出する機能も備える。

 負荷率や接地圧は高いほど施工リスクが高まるため、一般的な現場は負荷率の上限を80-90%に設定している。ケーディーツー・プランナーは負荷率を自動計算し、設定した負荷率の上限を超えるとエラー情報を出して再考を促す。これにより、安全で最適な施工法の検討を支援する。資材ごとの負荷率を一覧表にして、一連の作業の時間軸を把握する4D化にも対応している。

◆コストの最適機種 検索機能で選定
 クレーンの選定をアシストする「検索機能」も備える。資材、クレーンの設置場所、荷重、負荷率、揚程などの情報を入力すると、条件が成立する機種と仕様を自動で検索する。条件を増やすほど精度の高い検索が可能となる。同グループマネージャの岡田哲氏は「これまでの施工計画者はカタログのスペック表と図面を見て検討していたが、この検索機能を活用すれば必要なスペックを持つ最もコストパフォーマンスの良いクレーンを簡単に選べる。施工計画作成の早さと品質の大幅な向上が実現する」と説明する。

最適な機種を自動的に抽出する「クレーン検索機能」


 クレーンの「たわみ」を自動計算する技術も開発した。現在、特許を出願中で、吊り荷の重量に応じて発生するクレーンの変形をシミュレーションし、建物や足場への干渉を考慮した検討を可能にする。「たわみが吊り荷の位置に数mの誤差を生じさせることもあるため、現場の熟練オペレーターはたわみを考慮してクレーンを動かしている。施工計画者も経験に基づきたわみを考慮して施工計画を作成する。たわみが自動計算されることにより施工計画が容易になり、オペレーターの負担も軽減できる」と語る。

「たわみ」を断面図で表現。メーカーならではの専門的な機能を開発した


 新事業テクニカルサポートグループの高松伸広氏は「これまで鉄骨や鉄筋が吊り荷の中心だったが、工法が変化する中でプレキャスト(PCa)部材など難易度が高い作業が増えている。経験の少ない吊り荷に対し、事前にシミュレーションすることで生産性と安全性の確保に役立つ」と強調する。
 現在、ケーディーツー・プランナーのプロトタイプを十数社のゼネコンが試行している。結果をフィードバックした上で、22年中のリリースを予定している。



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