【BIM2022 設計データの高度利用】BIM軸にDX基盤を構築 丹青社 | 建設通信新聞Digital

4月19日 金曜日

B・C・I 未来図

【BIM2022 設計データの高度利用】BIM軸にDX基盤を構築 丹青社

◆効率化から新たな価値提供
 丹青社がBIM導入の階段を一気に駆け上がろうとしている。設計を担う270人体制のデザイン部門は100%のBIM利用環境を整え、施工を担う300人規模の制作部門53%まで拡充した。2021年4月発足のBIM推進委員会を統括するデザイン担当の徳増照彦専務は「BIMの活用によって時間短縮を実現する業務効率化だけでなく、新たな価値提供にもつなげていく」と先を見据える。
 BIMとの出会いは16年にさかのぼる。外資系プロジェクトの設計を手掛けた際にBIM対応を求められたことがきっかけになった。当時から徳増氏が新技術の導入を呼び掛け、既にBIMの研究に着手しており、トライアルプロジェクトを機にオートデスクのBIMソフト『Revit』を本格導入した。並行して情報共有を円滑に進める手段として『BIM360』などクラウドソリューションの活用もスタートし、社内環境を整えてきた。
 先行するデザイン部門では、分野を問わずBIM導入が一気に広がる。同社がけん引する内装・ディスプレイ業界は2次元図面を主体に顧客と合意形成を図り、空間構成が複雑な部分はパースを描くスタイルが一般的だっただけに「最初から3次元で空間表現できるBIMの効果は大きい」と設計担当の高橋淳一氏は実感している。
 直近のプロジェクトではウォークスルー機能を使って3次元空間の中を体感してもらい、その場で顧客から承認を得るケースも出てきた。「設計の進め方はBIMによって大きく変わり、設計から承認までのトータル時間でみれば、大きな時間短縮効果につながっている」と強調する。BIM利用環境が整うデザイン部門ではBIMを初体験する設計者が相次いでおり、「前向きな意識が広がっている」と付け加える。

BIMモデル(左)と実物空間


 デザイン部門を追うように制作部門もBIM対応を推し進めている。制作担当の森永倫夫取締役テクニカルセンター長は「ただ導入するだけでは意味を成さない。活用を前提に現場の士気を高めている」と強調する。制作部門では活用状況を数値化した浸透率を算出しており、23年1月期の目標としてBIM設計物件のう50%以上の活用を掲げている。
 内装・ディスプレイ分野をけん引する同社の設計施工一括比率は約6割に達する。デザイン部門はRevitを業務ツールに位置付けるものの、制作部門では2次元対応が一般的な他社設計の案件が4割ほどを占め、一気に移行できないジレンマもある。最近は他社でもRevitで設計しているケースも出始め、その際には積極的に施工BIMに挑むように促している。制作部門には「成功体験が何よりも重要」と鼓舞し続けている。
 BIM推進委員会には各部門・チームから総勢約50人が参加する。ソフト運用、BIMデザインパートナー、教育・育成、情報発信、サステナブルの5分科会で構成し、週一ペースで会合を開いている。社を挙げてBIMに取り組む上で、オートデスクと連携してRevitスキル向上のトレーニングに力を注ぐ一方で、顧客や協力会社にもBIM導入の理解を求める情報発信も積極的に進めている。

オンラインによる社内の教育風景


 岡崎勝久BIMデザイン局局長が「BIMを導入することがゴールではなく、次のステージに向けたスタート」と力を込めるように、同社はBIM導入の先をしっかりと見定めている。「建築プロジェクトではBIM導入の流れが加速している。いずれは建築からBIMデータを提供され、内装・ディスプレイ分野のわれわれが、施設運用の観点からクライアントにデータを引き継ぐ一気通貫の流れに発展することになる。そこにクラウドソリューションBIM360を活用することで、よりシームレスな業務・データの流れを実現していきたい」と考えている。
 森永氏は「BIMによって顧客との承認時間が早まるように、施工現場も協力会社との協議や合意形成がより円滑に進む。施工部分でも一貫したBIMのものづくりを確立したい」と語る。顧客に対しても同様だ。徳増氏は「カーボンニュートラルの根拠としてもBIMデータを活用できるように、積極的に導入効果を説明しており、BIM導入にチャレンジすることを決めた顧客もある」と明かす。

◆BIM軸にDX基盤を構築
 同社は24年1月期までの現行3カ年中期経営計画の中に、BIM導入を明確に位置付ける。その先にあるのは自らの生産性向上や働き方改革の実現だけではない。根底には「BIMを通して全てのステークホルダーに価値貢献をしていく」との思いがある。全社展開を目指すDXの基盤にも位置付け、BIMを軸に経営が回り始めた。

右から徳増氏、森永氏、岡崎氏、高橋氏



【B・C・I 未来図】ほかの記事はこちらから