【BIM未来図~地域建設業はいま~】ブレンスタッフ(下) 地域BIM連携のカタチ追求/地元企業69社と研究会展開 | 建設通信新聞Digital

5月3日 金曜日

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【BIM未来図~地域建設業はいま~】ブレンスタッフ(下) 地域BIM連携のカタチ追求/地元企業69社と研究会展開

ブレンスタッフ(山形県鶴岡市)は、地元建設会社の佐藤工務、鶴岡建設、林建設工業、丸高と連携し、2020年に「庄内BIM研究会」を発足した。高齢化や担い手不足に悩む建設会社は生産性向上の手段となり得るBIMに対して強い期待を持っているものの、資金面に加え、人材育成や導入基盤の整備ノウハウもなく、社単独でBIMと真正面から向き合うことが難しい。地元の建設会社や設計事務所、専門工事会社など69社が加盟した。

研究会組織図


研究会ではBIM活用に向け、講演会や勉強会のほか、情報共有やパイロット事業なども進めている。国土交通省の21年BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業(中小事業者BIM試行型)にも採択されるなど、地方におけるBIM普及のモデルケースとして注目されている。

月1回のペースで開く研究会の勉強会では、全国各地でBIM導入を推し進める地域の建設会社や設計事務所にヒアリングし、BIM導入へのポイントを抽出している。ことし7月には鳥取県米子市に本社を置く美保テクノスの新田唯史BIM戦略部長を講師に招き、BIM導入の目的や進め方について助言を受けた。

美保テクノスは、BIMソフト「Revit」を標準ソフトに定め、社を挙げてBIMワークフローを確立を目指している。現在はPFI事業と新本社屋の二つのプロジェクトで設計から施工までの一貫したフルBIMにチャレンジしており、山陰地方を代表するBIM活用企業となっている。当初は生産性向上の手段として「つくるBIM」を重要視してきたが、現在は建築主や社会への「貢献するBIM」を打ち出している。

ブレンスタッフの仲川昌夫代表は「美保テクノスのようにBIM導入を引っ張る強力な推進者と、それをバックアップする柔軟な経営者がいなければ、BIMをものにすることはできない」と考えている。伝統的に築いてきた建築生産システムを継承しながら、そこにBIMの流れを加えてシステムを再構築するには、最前線の現場担当者が主体となり、課題を抽出しなければ、実態に即した生産改革は実現できないからだ。

9月に研究会との意見交換会にオンラインで出席した国土交通省住宅局建築指導課の松本朋之課長補佐は「地方の建設会社ではBIM導入の進め方がまだ確立していない。1企業だけで進めていくのは難しく、庄内BIM研究会のように地域が連携して情報やノウハウを共有しながら、より良いカタチを追求していくことが近道だろう」と率直に感想を述べる。

庄内BIM研究会設立総会


ブレンスタッフがdpc設計マネジメントの確立に乗り出してから5年の歳月が経過したが、設計から施工、維持管理まで一貫して取り組んだプロジェクトはまだない。仲川代表は「導入が目的ではなく、BIMを使って何をするか、その目的をきちんと定め、順を追って着実に進めていくことが重要だ」との信念を持ちBIMと向き合っている。

分野を問わずDX(デジタルトランスフォーメーション)が拡大する中、建設産業界ではBIMを出発点にDX推進に乗り出す動きが出始めた。「DXはBIMを活用したフロントローディングの先にある」(仲川代表)。同社は自らが描いた理想的なBIMの“カタチ”に着実に近づいている。



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