【記者座談会】コロナ5類でインバウンド本格化/ウクライナ侵攻から1年 | 建設通信新聞Digital

5月15日 水曜日

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【記者座談会】コロナ5類でインバウンド本格化/ウクライナ侵攻から1年

◆“爆買い”と桁の違う富裕層がターゲット

A 新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行すると、インバウンド(訪日外国人客)が本格的に回復するだろう。観光業や関連施設はどう変化するのか。

B 特徴的なのは、富裕層を対象としたホテルや住宅の整備が進んでいることだ。東急不動産が東京・渋谷駅前で進める「Shibuya Sakura Stage」には、長期滞在用サービスアパートメントを整備し、外国人向けの保育施設も設ける。東京駅前の「torch Tower」の高層部には、世界有数の超高級ホテル「ドーチェスター・コレクション」が進出する。東京都港区の麻布台ヒルズの最上階も外国人富裕層をターゲットにした住宅になる。

C 一口に富裕層といっても、コロナ禍前のいわゆる“爆買い”をする富裕層とは桁の違う富裕層に狙いを定めている。こうした客層は欧米人が多く、彼らはいま『スピリチュアル』を求めており、寺院や自然といった精神世界を体感できる日本に注目している。こうした長期滞在型の欧米人を取り込むために施設整備が進んでいる。

B あるデベロッパーに聞いたが、アジア人と欧米人では客単価に2桁ほど差があるらしい。コロナ前の観光地はマナー問題があった一方で、爆買いの経済効果を切り捨てられず客層を切り替えられなかった。それがコロナ禍でいったん観光地がリセットされた。アフターコロナを機に、一気に欧米の富裕層にターゲットを切り替えている。

C 観光地も、安価な土産物や大量消費物ではなく、新たな客層に焦点を当てた商売をしなければ生き残っていけない。建設業も客層の変化を捉える必要がある。標準型で安価な施設ではなく、高くても文化・自然を感じられる施設の提案が求められている。

Torch Towerに進出するドーチェスター・コレクションのロビーイメージ。従来の国内の“高級ホテル”の概念を覆すウルトララグジュアリーホテルとなる (提供:Dorchester Collection)

混乱継続、さらなる対策を

A ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から、24日で1年になる。早期決戦をもくろんで仕掛けたのだろうが、ロシアの誤算で長期化している。

D この影響はあらゆる方面に及んでいる。建設資材は高騰し、必要な資材や部材の入手難で工程が遅延する事態も案件によっては生じている。早めの情報入手と資材確保、代替品の使用、価格転嫁などで影響を回避する動きもみられるが減益になった企業もある。状況は以前より落ち着いてきたという声も聞こえるが、いまだに改善していないと言い切る企業も少なくない。

E その影響が企業にとって大変なのは分かるが、うちの家計はもっと大変だ。電気代やガス代といった光熱費が昨年に比べて1万円以上も値上がりしている。冬は使用量が増えるだけに、懐事情は「厳しい」の一言に尽きる。食品や生活必需品なども次々と値上がりしている。

D 最近は生活にかかる従業員の負担を考慮し、インフレ対応の特別一時金を支給する企業が増えている。安心して働いてもらうための環境整備の一環でもあり、従業員にとっては大変心強いサポートだ。

F 一時金とともに最近は給与水準を引き上げたり、あるいは検討する企業が増えている。人材確保のためにやむを得ないとはいえ、賃上げ競争に巻き込まれたくないという本音も聞こえてくる。

A 物価上昇率を超える賃上げを首相が求めている一方で、増税ムードが漂っている。混乱は続き課題も山積している。増税の前に、さらなる経済対策が必要だろう。

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