【ICT浚渫工事のいま】水中ソナーで施工状況をリアルタイムに立体映像化! 五洋建設 | 建設通信新聞Digital

4月25日 木曜日

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【ICT浚渫工事のいま<上>】水中ソナーで施工状況をリアルタイムに立体映像化! 五洋建設

活躍中の多機能型バックホウ浚渫船

 「浚渫工事とICTの相性は抜群に良い」と切り出すのは、五洋建設の野口哲史取締役常務執行役員土木部門土木本部長だ。「水中の見えなかったものを作業時に見せてくれるICTの効果は、将来の海底資源開発のベース技術にもなる」と先を見据える。国土交通省直轄の浚渫工事では2017年度からICT活用がスタートした。海上土木のトップランナーとして走り続ける同社の取り組みから、ICT浚渫工事のいまを追った。
 浚渫工事の水深測量に音波探査が採用されたのは1980年代後半からだ。一方向に音波を出すシングルビーム測量は現在も国交省の定める検査手法に位置付けられているが、マリコンの中には90年代から海底地形を面的に捉えるナローマルチビーム計測を使い始める動きが出ていた。いち早く取り組んだ五洋建設の実績は既に数百件を超える。「いまではナローマルチビーム計測が業界の標準になっている」と野口本部長は強調する。
 調査船の直下に音波を発射するシングルビームで面的な測量を行う場合、調査船は何往復も航行する必要があるが、扇状に音波を発射するナローマルチビームではより効率的な測量が実現できる。ただ、2次元ビームによる測量であるため、リアルタイムに海底形状を把握するのには不向きだ。そこで同社は超音波を立体的に照射し、海底の地形や構造物の形状を把握できる水中ソナーを使った施工管理システムの導入に踏み切り、既に50件を超える導入実績を誇る。「いまやこれが浚渫工事での最先端をいく」(野口本部長)。

操縦席から施工状況をリアルに把握

 同社が水中ソナーシステムに目を付けたのは、15年ほど前にさかのぼる。水産庁が発注した海底に山を構築する湧昇流の築造工事で、捨石の投入状況をリアルタイムに把握する手段として導入を検討した。土木本部船舶機械部の眞鍋匠担当部長は「当時のシステムはまだ未成熟の部分があったため、導入を断念したが、将来は必ず使うことになるという予感はあった」と振り返る。
 本格導入したのは11年からだ。システム価格は1セットおよそ6000万円と高額だが、いまでは9セットを保有し、全支店が使えるまでに増やした。もともと油田開発などに使われ、座標系の基準表示も日本とは異なるため、機器メーカーと提携しながら、計測範囲の拡大やソフトウェアも含めたシステムの改良を地道に重ねてきた。

水中ソナーは超音波を立体的に照射する

 対象物に超音波を立体的に照射し、その計測結果を立体映像として可視化できる水中ソナーシステムではX・Y・Z(縦・横・高さ)に加え、時間軸も含めた映像化が可能になるため、施工の状況をリアルタイムに観測できる。船舶機械の重機オペレーターは映像を見ながらの操作となり、作業効率とともに施工精度も大幅に向上する。
 長さ24mという国内最長のロングアームを装備した同社保有の多機能型バックホウ浚渫船「BHC-2401」は、水中ソナーシステムと連動した最先端の施工を実現している。茨城県ひたちなか市で施工した国土交通省発注の廃棄物処分場護岸工事に初導入し、現在は石油資源開発発注の相馬LNG基地建設工事における法面形成作業で活躍中だ。
 3Dマシンガイダンスと船舶誘導システムに水中ソナーを組み合わせた施工管理のトータルシステムを構築したことで、日本最長のアームの施工状況と3次元計画データとの差異を把握しながらの緻密な施工が実現する。小崎正弘船舶機械部長は「浚渫工事は陸上土木と違い、水中という条件下で作業を行うため、いかに施工状況を見える化できるかが、昔から技術のテーマとしてあった。リアルタイム確認が可能な水中ソナーの導入効果は大きい」と手応えを口にする。

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