【記者座談会】第2回建築文化検討会議/3Dプリンター住宅 | 建設通信新聞Digital

5月17日 金曜日

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【記者座談会】第2回建築文化検討会議/3Dプリンター住宅

多面的に建築文化の魅力を議論

A 文化庁が建築文化検討会議の第2回会合を開いたね。そもそも何を話し合う会議なのかな。

B これからの日本の文化政策に建築領域を位置付けるため、建築に対する現状認識や取り扱いを整理し、望ましい在り方を考えるための会議だ。3月に決定した第2期文化芸術推進基本計画に、「建築文化の振興」の視点が初めて盛り込まれたことが設置の背景となっている。

A 文化庁側はどんな問題を感じているのかな。

B 日本の近現代建築は、プリツカー賞受賞者を輩出するなど世界的に評価が高い一方、これまでの行政政策では、建築の文化的な魅力や強みを整理して世界に打って出ようとする動きが弱かった。文化立国としての魅力を発信していく上でも、この点を強化する必要性を感じているようだ。

C 建築は、文化や経済以外に歴史や観光などとも関わりが深い。国土交通省をはじめ、多くの省庁が関係するだけに、建築文化については横断的な議論が必要だね。

B 会議では、建築物単体ではなく、周辺風景やまち並みなどを総合的に“建築文化”と捉える視点が、今後の文化行政の重要なポイントだと指摘していた。こうした見方は、文化庁の拠点が移った京都府の町屋景観のように観光面でも効果を発揮しそうだ。

C 伝統的な建築やまち並みを保存・活用する一方で、建物の新築は、技術の研さんや継承、安全の観点から重要だ。価値のある建物の有効活用と建て替えのバランスを取ることが重要だね。

B 日本に数多くある名建築の全てを残すことは難しいが、新旧の建築が共存していくためにも、多様な切り口で建築の価値を考える意義は大きい。5月の最終会合での議論のまとめに期待したい。

住宅ローンからの解放や災害対応に期待

大林組の技術研究所に完成した3Dプリンター建築物「3dpod」。なめらかな曲線で造形されている。将来的には宇宙空間での建設への適用など幅広い可能性を追求する


A 建築文化も重要だが、3Dプリンターを使った未来の建築も注目されている。

D 大林組が技術研究所で建設を進めてきた、セメント系材料を使った3Dプリンター建築物「3dpod」が完成した。国内で初めて建築基準法に基づく国土交通大臣認定を受け、地上構造部材を全て3Dプリンターで建設した。滑らかな曲線が特徴的だ。技術的には複数階の建物も建築できるそうだ。

E まずは小規模な建物に加え、建物内で部分的に意匠性が求められる箇所への適用や、モニュメントの製作などが中心になるのではないかな。個性的な建築が可能となるため、その独創性からファッションデザイナーのような感覚で斬新なものづくりに興味を持ち、建設業界を目指す人も出てくるかもしれない。

A 普及するだろうか。

D 価格次第だと思う。戦略としては、“住宅ローンからの解放”が最も大きなアピールポイントになるだろう。住宅自体の価格が抑えられるようになるだけではない。近い将来に「空飛ぶクルマ」が一般的になれば、都市部から離れた土地代の安い場所に建てられる。人々を住宅ローンから解放し、車を乗り替えるように、家を買い換えるようになる。

E 2次製品(プレキャスト)と違って現場近くで印刷することも可能だ。クリエーティブな作業だけでなく、緊急的な災害復旧などにも効果を発揮すると思う。

D セレンディクスの3Dプリンター住宅も、もともとは別荘や災害復興住宅向けに開発されたそうだ。災害時に時間やコストをかけずに建てられるようになれば期待大だと思う。住宅の内側は凸凹しているため、左官などでフラットにする必要がある。そこには日本の左官職人の技術も生かせるのではないかな。

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