【生成AIと建設】話題の「Chat GPT」建設業界でどう使う? | 建設通信新聞Digital

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【生成AIと建設】話題の「Chat GPT」建設業界でどう使う?

◆サービス展開はスタートアップが先行
 手軽さや活用できそうな分野の広さで、世界的に熱視線を集めているのが、米オープン AIの提供する「Chat(チャット)GPT」などの生成AI(人工知能)だ。利用者が質問文やキーワードを入力したり画像をアップロードすると、それらをもとに文章や画像などを生成する。生成AIの活用は多くの方面で期待されており、国会答弁など厳格さが必要な用途でも政府が活用を検討するほどだ。もちろん建設業界でも、生成AIと他のシステムを組み合わせたサービスの展開が、スタートアップ企業を中心に始まっている。

 

スタディフューズで生成された画像

スタディフューズに入力した画像


◆複数の生成AIを同時に動かす
 慶大、京大の特任助教授である對間昌宏氏が代表取締役CEOを務め、不動産・建設領域向けのソフトウエア開発を手掛けるmign(マイン、東京都文京区)はことし4月、設計者向けソフトウエア「studiffuse(スタディーフューズ)」に、チャットGPTと「Stable Diffusion」(ステーブル・ディフュージョン)を連携させた機能を追加した。ステーブル・ディフュージョンは英Stability AI(スタビリティーAI)が提供する画像生成AIで、異なる生成AIを連携させている。この機能では、文章や画像を入力すると、入力をチャットGPTが要約し、要約をもとにステーブル・ディフュージョンが画像を生成する。設計の初期段階でクライアントとの打ち合わせ記録や参考画像をもとに空間の画像を多数生成し、目指すべき空間の絞り込みやすり合わせなどに活用する。

 

 またマインは、チャットGPTを建設業に特化させた対話AIモデル「chact」(チャクト)を開発した。設備工事業で現在必要な行政や専門家とのやりとりの時間や人件費を削減するため、富士古河E&Cと同モデルを利用した実証実験を4月に開始した。

 

◆生成AIは社内の生き字引きになれるか
 産業向けにAI技術を展開する燈(東京都文京区、野呂侑希代表取締役)は、東大工学部でAIなどを研究する松尾豊研究室発のスタートアップとして21年2月に創業した。同社は、チャットGPTと建設関連データの認識技術を組み合わせたサービス「AKARI Construction LLM」の提供を3月に開始した。利用者が過去の測量や設計図書、仕様書、BIMデータなどをあらかじめ読み込ませておくと、過去の議事録や仕様書から知りたい事例を教えてくれたり、自動で単価計算をしてくれる。同社は今後、データの活用方法や、どのデータを生成AIに与えるかなどの面から、ユーザー各社に提案していく。

 

「BIM/CIM HUB」チャットボットの使用例

◆チャットGPTがBIMを教える日

 21年2月に設立した土木分野向け技術支援などを手掛けるMalme(マルメ、東京都千代田区、高取佑代表取締役)は4月、技術者向けサイト「BIM/CIM HUB」でチャットボットを公開した。チャットGPTをBIM/CIM関連の質問に特化させており、質問を入力すると、同サイトで公開している技術情報や国土交通省のガイドラインなどに基づいた回答を生成する。同社は、このサービスを若手技術者が短期間で必要なスキルを習得して迅速に現場で活躍するための取り組みの第一歩に位置付けている。今後は、専門知識やモデリング手法、設計自動化など、BIM/CIMをはじめとした建設DX(デジタルトランスフォーメーション)全般に関わる知識への対応を目指す。

 

◆生成AIの違い、限界とは

 生成AIの建設業向けサービスでは、建設業や各社に関するデータを生成AIに追加で学習させる「ファインチューニング」を行っている。同じ生成AIを利用しても、このファインチューニングの方法により、用途や使い勝手などに差が生まれる。

 ただし、生成AIは生成した内容の正確さや、知的財産権などの扱いに課題がある。このため、用途は過去データの検索やデザイン検討、技術学習や教育の補助などにとどまる。これらの課題解決が建設業における生成AI普及の鍵を握る。

 

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