発注者の合意形成を効率化
JR東日本建築設計(JRED)は、BIMを活用した「鉄道電気設備建物」の自動設計ツールを開発した。パラメータに入力する簡単な操作で建物マスモデルを自動生成し、規模やコストを前倒しかつ効率的に検討する。さらに建設予定地(複数箇所)の点群データと統合し、CDE(共通データ環境)を通じて情報共有することで、関係者間の合意形成を円滑化する。本システムは、国土交通省令和4年度BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業(先導事業者型)に「鉄道施設における設計フロントローディングを用いた効率化の検討」のテーマで採択されたもので、発注者(東日本旅客鉄道=以下JR東日本)と受注者(JRED)の社内調整の円滑化やコスト削減に貢献するシステムを目指した。
鉄道電気設備建物は、規模が約50~200㎡の小規模施設が複数あり、電気、通信関係の機器など電車運行に不可欠な設備を収納する。JR東日本は数多くの建屋を保有し、老朽化に伴う機器の計画的・継続的な更新が必要となっている。
施設の更新では、発注者(JR東日本)が候補地選定や概算費用の算出などの検討を進めるが、線路内の狭隘かつ既存設備が錯綜する敷地条件が多く、検討が長期化する場面もある。そのため本システムは機器や寸法、配置、通路、作業スペースなどをBIMに入力し、マスモデルを自動生成して建物ボリュームや概算工事費を簡単に算出するほか建設地の点群データを統合して電車の架線や軌道など支障物との離隔をパソコンやモバイル端末で確認し、合意形成を円滑化する。斎藤正司JR東日本建築設計技術本部安全推進部兼IT推進部課長は「CDEを利用することで現地に行かずに確認でき、多数の部署で行う現地確認や合意形成の所要時間の大幅な削減を可能にする」と説明する。
2023年度の取り組みについて柳澤剛技術本部IT推進部部長は「実案件で本システムの導入を図るとともに製品版のリリースを目指す。基本、実施設計に自動設計を拡大し、さらなる生産性向上を実現したい」と方針を示す。
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