【BIM2023⑥】JR東日本東京建設PMO 調査設計段階のBIM活用マニュアル作成 | 建設通信新聞Digital

5月18日 土曜日

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【BIM2023⑥】JR東日本東京建設PMO 調査設計段階のBIM活用マニュアル作成

BIMモデルから概算工事費を算出

左から奥橋氏、高橋氏、岩崎氏、熊谷氏


 JR東日本東京建設プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)では、調査設計(基本計画)段階でのBIM活用を図るため、オートデスクのBIMソフト『Revit』を活用した設計業務マニュアルを作成した。駅まちづくりユニット建築計画マネージャー(統括)の高橋健氏は「初心者でも一から読めばBIMが扱えることを目指した」と力を込める。マニュアルの水平展開を図ることで、社内におけるBIM活用を促進し、設計業務の簡素・効率化の実現を目指す考えだ。

 調査設計(基本計画)は、基本設計に入る前の物件調査や工事費の算定などを行う。従来はAutoCADで設計案を作成し、BIM活用は、パースの作成や空間イメージの可視化にとどまっていた。そのため、設計者が業務上でBIMの必要性を感じておらず、人材育成や導入が進まない悪循環に陥っていた。

 同課の奥橋翔氏は「負の連鎖をどうやって脱するかが大きな課題だった」と語る。そこで、調査設計の段階でどれだけ使えるか実践しながら検討を重ね、最終的にBIMをCADに変わる設計ツールとすることを目標とした。

 マニュアルは、設計業務の流れに基づきステップを三つに分け、条件の整理やモデルの配置などの手順を示す。構造計算や環境負荷などの計算は省略し、必要な機能だけを盛り込んだ。作成するモデルは、配置の検討や成果物の出力など段階に応じてLOD(モデル詳細度)を変化させるといった指示も記載されている。そのため、社員は直感的に3次元モデルを作成することができる。

 マニュアル作成の際には、ジェイアール東日本建築設計事務所(JRE設計)とも連携した。高橋氏は「表現の一字一句についても、日常的にBIMに触れていない社員の理解が促進するようにフィードバックを繰り返しながら作成した」と振り返る。

 Revitの機能により床面積を基に概算工事費の算出も可能とする。同課の熊谷友花氏は「検討案ごとに数量の算出をしなくてもいい点がBIM活用の大きなメリットだといえる」と説明する。また、壁や屋根など部位ごとの数量も出力ができるので、工事費単価を挿入すれば、ある程度精緻な工事費を算出できる。

 今後は、内容のブラッシュアップを図りつつ、得られた知見を社内の各部門への水平展開や実業務で試行することを検討している。駅まちづくりユニット建築戦略(建築技術)チーフの岩崎頼太氏は「調査設計から本格的な設計業務に使える入り口になるようにしていきたい」と見据える。



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