【レジリエンス社会へ】国土交通省技監 吉岡幹夫氏 | 建設通信新聞Digital

5月14日 火曜日

レジリエンス社会へ

【レジリエンス社会へ】国土交通省技監 吉岡幹夫氏

100年契機に防災意識醸成/有事への備え絶えず進化

 「関東大震災を機に、インフラのつくり方や配置の考え方が大きく変わった。それが基礎となり、これまで進化を続けてきた。今後もレベルアップを図っていく」と話す国土交通省の吉岡幹夫技監は、世界有数の地震多発地帯に位置するなど災害が発生しやすい国土である以上、有事への備えを絶えず進化させていく必要性を指摘する。災害による被害を最小化するためには、「国民一人ひとりが災害を自分事と捉えて発生時に適切な避難行動を取ることも重要」と説き、関東大震災から100年という節目の年に当たることを契機として、防災意識の醸成に一層取り組む姿勢だ。

吉岡幹夫氏

 「国土面積が世界のわずか0.25%の日本で、マグニチュード6以上の地震が2割以上起きている。まずは、地震が非常に多い国土であると認識しなければならない」と強調する。

 多数の建物倒壊や広範囲にわたる火災が発生した関東大震災を機に、耐震基準が導入されるなど建物やインフラのつくり方が変わり、延焼防止や避難場所確保を考慮したインフラの空間配置も始まったとして、10万人を超える死者数を記録した未曽有の大災害がインフラ面で一つの転換点になったとの認識を示す。それが礎となり、大きな災害が発生して新たな問題が生じるたびに基準を引き上げるなど「取り組みを進化させてきた」。この方向性は今後も変わらないとし、関東地方の地震で“当面の脅威”と位置付ける首都直下地震に備え、不断にレベルアップを図る構えだ。

 日本は地震だけでなく、台風などの水災害とも向き合ってきた。大雨が増え、雨の降り方も変わってきたことで水災害の激甚化・頻発化が懸念される中、被害の抑制に向けては定期的に土砂を掘削して河川の流下能力を確保するなどのハード対策が必要とし、「投資を続けていかなければならない。防災・減災、国土強靱化に終わりはない」と言い切る。

 その上で議員立法の改正国土強靱化基本法が通常国会で成立したことに触れ、「事業計画を法定化し、『防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策』後も投資を続けられる枠組みができたことは、非常に大きい」と語る。

 ソフト対策の重要性にも言及し、「住んでいるエリアの安全性や災害時の避難場所を自ら調べるなど、災害を自分事と捉えることが大事」と説く。国交省が8月28日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開くシンポジウムなど、関東大震災から100年の関連イベントを通じて、「改めて防災意識を醸成していきたい」と力を込める。

 市町村の支援にも全力を挙げる。市町村の2割以上は技術職員が一人もいないなどマンパワー不足が深刻で、「インフラの防災機能を確保するためにはしっかりメンテナンスを行う必要があるが、機能の維持が厳しくなっている」と課題を指摘。こうした中、複数・広域・多分野のインフラ施設を“群”と捉えて地域でインフラをマネジメントする「地域インフラ群再生戦略マネジメント」の考え方に基づき、市町村がインフラメンテナンスで相互協力する体制の構築を支援していくとし、「平時の取り組みから協力を始め、災害時にも活用できるようになれば」と意気込む。



【レジリエンス社会へ】ほかの記事はこちらから



建設通信新聞電子版購読をご希望の方はこちら